Neetel Inside 文芸新都
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砲撃隊長アレッポは当時甲骨国軍の両武軍団に居た。レーゼンビ一城を陥落させ,北方戦線もあとはコネリ一高原を攻略するのみである。甲骨国軍のホロヴィズ将軍はアレッポによる砲撃隊の援護は過剰殺戮と考えていた。今はクラウス将軍率いるアルフヘイム西方軍攻略のために、戦況が有利に働いているこの北方戦線からアレッポを異動させるべきだという考えだ。

だが,現状を目の当たりにしていた丙武はボロヴィズのこの判断が愚かなものであると言わざるを得なかった。

いくらレーゼンビ一城を陥落させたとは言え,コネリー高原までの間を甲骨国軍が無傷でくぐり抜けてきたわけではない。それどころか,コネリー高原までの進撃は予想に消耗を強いられた。白兎軍も不落のレーゼンビ一城を落とされ,衝撃を受けてはいたが,戦意を喪失していた訳ではなかった。退却しながらも,白兎軍は丙武軍団の追撃を抑え込んでいた。聖地ブロスナンへの想いが希望を失いかけていた彼等の最後に残された糸だった。白兎軍の抵抗ぶりは聖地への信仰というよりは,まるで愛する女を護るかのように壮絶であった。
「女王陛下万歳~!!」
また散り逝く白兎軍兵士の断末魔を
聞いて大方 丙武は予想がついていた
「奴らはピーターシルヴァニアン王家の為でも,ピアースの為でも,聖地ブロスナンの為でもない,女王の為に戦っているのだ」

かつて白兎人族を治めていた女王がいた。彼女の名前はヴェスパーと言い,国民を愛し,長年黒兎人族との和解を長年の悲願としていた程の慈悲深い女王だった。彼女は末期の肝臓癌と診断され,余命幾許もなかった
彼女は最期の地として白兎を代々見守ってきてくれた神々がいる聖地ブロスナンで、刻一刻と忍びつつあった死を迎え入れることを誓ったのだ。敗走状態の白兎軍が激しい抵抗ぶりを見せていたのは女王ヴェスパーのためであった。
その状況下で,彼等はこのトレイシーフォレスト攻略という難題に出くわしたのだ。Gスポットの正確な場所は上空からでも確認はできた
だが,このGスポットは常に移動し続けていた。そのため,上空からの偵察資料など数時間もすればただの紙切れと化した。故にGスポットは神出鬼没であるが故、回避は困難をきわめ、出くわしたら最後、あとは白兎軍兵士に嬲り殺しにされるだけだ。極めて士気抜群で,地の利と,獣の利がある彼等に白兵戦でかなう筈がなかった。丙武はアレッポにトレイシーフォレストの爆撃を命ぜざるを得なかった。

「どうやらホロヴィズ将軍閣下には誤った現状が報告されているようだ」

北方戦線攻略まであと一歩というところなのだ
ここでアレッポを引きぬかれるわけにはいかないのだ。

       

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