Neetel Inside 文芸新都
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 クリック音を鳴らしながら
黒兎兵が十六夜部隊を案内する。
「・・・敵の方向、この方向約800m地点・・・ンマー少尉の指揮所です。マゾホン少佐の指揮所は更に奥やや北東200m地点にあります 」
十六夜部隊を案内した黒兎人族兵が状況を説明する。人間タイプの黒兎人族兵の彼の頭部に生えている筈の4つの黒い兎耳は削ぎ落とされ、そのお陰か帽子さえ被れば人間の兵士と見間違える程になっていた。
それは いつでも彼が人間の多い甲皇国軍の敵陣に変装して乗り込めるように考え込まれた苦肉の策だった。

無論、今回主力となる十六夜部隊の面々も人間タイプの外見をした隊員が多い。彼等も長年の部隊勤務の特性上、人間の本陣への潜入が多い為、頭部の耳を切り落としている。人間の兵士になりすますことが可能な彼等には敵兵に変装して標的に接近もらうことになる。

セキーネ含むウサギタイプの兵士は専ら彼等のバックアップに回る。
彼等が侵入する上で障害となる敵兵の暗殺やトラップを破壊するのだ。
(上手くいってくれ)

セキーネは自らの成功を祈り、敵陣のある方向へと歩いていく。

「2手に分かれよう ブラッドストーン分隊、クワンタム分隊はンマーの陣地へ向かえ 残余は私と一緒にマゾホンの陣地だ」


ブラッドストーン分隊とクワンタム分隊と分派して、セキーネ率いるピーター分隊は残余の分隊を引き連れてマゾホン少佐の陣地へと向かう。
セキーネの手元にいるのは彼が長を務めるピーター分隊とナイトファイア分隊の2つである。
敵の歩哨の交代時間を狙って、ナイトファイア分隊が行動を開始する手筈だ。歩哨に上番する兵士と下番する兵士が出会う前に、そいつらに変装しなければならない。
手順はこうだ。上番する兵士を始末して、変装。その後、下番する兵士と出会い、交代の報告をさせる。 
(定時報告の時間は既に捕虜を尋問して、掌握済みだ)
その直後に、下番する兵士を始末して、変装。この手順を繰り返し、徐々に各エリアを落としていく。
「00こちら01 異状無し」
異状無しの報告で陣地内をとことん安心させ、奴等の警戒心を尻軽女の陰部の様に緩々に解かせてやるのだ。ナイトファイア分隊は上番兵と下番兵を絞殺ワイヤーと剌殺ピックで始末していき、セキーネのピーター分隊を配電エリアへと導いて行った。配電エリアに置かれた発電機はチェーンソーやバイクの如く鳴り響いている。最早この音が鳴り響いていることが日常と化している兵士どもは、陣地内の些細な異常に気付きもしない。おまけに異状無しの報告で、尻軽女の陰部の如く緩みに緩み切った警戒心だ。陽動することなど容易いことだった。

セキーネは発電機を停止させ、陣地内の兵達を配電エリアへと陽動した。これでマゾホン少佐までの道は大方通過できる。暗闇の中、セキーネ達のピーター分隊は混乱するマゾホン少佐の司令エリアの指揮官達を始末していった。蠢く呻き声の中、ゾマホン少佐は48口径の大型拳銃を手に暗闇の暗殺者を探す。
「どこだ!どこにい」
その刹那、セキーネの両手に握り締められたワイヤーがゾマホン少佐の首に絡みつき、肉と皮膚へと喰い込む様はまるで紐で縛られた燻製ハムの様だった。
「ぅげぁあァッ!」

気道と頸動脈を締め付けられ、
暴れるマゾホン少佐は咄嗟に絞殺者セキーネの右眼めがけて右手の中指を突き刺した。ビキニ拳法に伝わる絞殺殺し技だ。目を抉り取られれば流石に絞殺者も手を放す故、それを好機に反撃する算段の筈だった。
「うげあアあァッ!」
マゾホン少佐の右手の中指はセキーネの右眼を抉ることは無かった。セキーネは紙一重で中指をかわし、その指を司る右手の親指へと噛みついた。
「うごぁ・・・か」
マゾホン少佐の血みどろになった右手の甲が床を叩き、少佐は絶命した。暗殺者としての修羅場を潜り抜けてきたセキーネは、この様な絞殺殺し技が来ることぐらい予見出来ていた。中指を噛まず、敢えて親指を噛んだのも理由がある。もし、中指を噛んでしまった場合、親指で右眼を抉られる可能性がある。セキーネを十六夜部隊で長年仕込まれた訓練成果と実戦経験の賜物だった。
しかも、その殺し技を兎人族の前歯でやるとなると最早それはただの殺し技の粋を易々と超える。丸太をまるでチーズのように噛み千切る噛み付きによって、マゾホン少佐の右手は皮ー枚で繋がった状態になっていた。
「総員、撤収だ!行くぞ!」
セキーネ率いるピータ一分隊と警備兵に成り済ましていたナイトファイア分隊は陣地内の明かりが復旧するのを待たず、過ぎ去る嵐の如く撤収していった。

       

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