Neetel Inside 文芸新都
表紙

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炎と熱風が黄金色に輝き 砂塵が舞う・・・
麦畑のように広がる頭蓋骨と死体からは鉄臭さと
脂の焦げた臭いがする。転がる内臓からは糞や小便が零れ、強烈な異臭を放っていた。
気が滅入りそうな程の惨状の中、ディオゴとヌメロは地獄と化したフローリアを歩いていた。
先ほどの激情の衝突で気まずい雰囲気が流れている。
「・・・ヌメロ」
口を開いたのはディオゴだった。
「・・・何です?」
先ほど怒りに任せて乱暴な口調で話してしまったことに気まずさを覚えながら、ヌメロは尋ねた。
「・・・俺を見限ってくれてもいい・・・俺が人から愛される資格が無いことくらい分かってる・・・・・・だけど、俺を裏切らないでくれ。」
「・・・ディオゴ様」
「これ以上、裏切られたら・・・俺はどうすればいいかもう分からない。」
あくまでもディオゴ目線ではあるが、信じていた筈のセキーネに裏切られ、そのセキーネを匿うためにガザミやゲオルクに欺かれていたことが辛かったのだろう。ディオゴは歩きながら溢れる涙を拭い続けていた。 確かに自分も至らぬ所はあった、セキーネがフローリアに居ると知ればディオゴは確実に私怨に駆られて行動していただろうし、ゲオルク達もそれを見据えていたのだろう。
でも・・・腹を割って話して欲しかった。
「私怨で動くな」という言葉さえかけてくれたら
少しは救われたのかもしれない。
「・・・いつでも傍にいますよ」
ふとヌメロは言った。
会話として成り立ってはいないのかもしれない、たが今のディオゴを救う言葉としてはこれ以上の言葉はなかった。ディオゴの傷だらけの冷えた心が少しずつ温まっていくのを彼自身感じたのだった。

セキーネが向かっているイーストウッド港・・・
ここからイーストウッド港はいくら兎人族といえども歩いていける距離ではない。300kmはある。ゲオルク達がセキーネをここから脱出させたのがおよそ3日前ぐらい・・・馬車や徒歩行進で避難した難民の群れに紛れ込んだとして 単純に1日4~50km歩くとして今は半分に差し掛かったところだろう。
「かなり遅れをとっちまったが行くしかねぇな」
「・・・ええ」
ディオゴとヌメロは行く・・・
セキーネを追う・・・ただそれだけのために。
泣きはらしたディオゴの赤く腫れた目がセキーネのいる遥か彼方を見つめていた。



つづく

       

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