Neetel Inside 文芸新都
表紙

生と詩と性と死の聖都市。
六番街、川を望むアパルトマンの十二号室

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浴室には石鹸の甘い香りが充満していた。
果てしない虚無感を張った浴槽に浸かって凍えていた。
この間の月は綺麗だった。
でも、その次の日も月は綺麗だった。
「窓から見えるのは全てもう無効の日」
お気に入りのシンガーが歌う。
いつも咽喉が乾く感覚に苛まれてた。
吐き気がするほど健康で、泣けてくるほど安定している。
昨日も今日も雨、今日も明日も雨。
明け立ての夜が特別でなくなったのはいつだろうか。
今日はとても静かな日だった。
頭の中だけは五月蠅かった。
今日はとても静かな日だった。
頭の中はいつでも五月蠅かった。



穏やかな日常を望んでいた。
現実には破滅的なことばかりしている。
最近毎朝料理をする。
ぐちゃぐちゃの頭を煙で誤魔化した。
身体がひどく重かった。
頭はもっと重かった。
黒く塗った爪が少し僕を落ち着かせる。
まだ、雨が降っていた。
肥り過ぎた嫉妬と諦観が厭な笑みを浮かべている。
果たして僕は何にも満たない。
今日はとても静かな日だった。
頭の中だけは五月蠅かった。
今日はとても静かな日だった。
頭の中はいつでも五月蠅かった。



幸福を、願った。

       

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