Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

 ズンダ折に用いられるのは細長い棒である。何のことは無い。その棒で被処刑者を処刑係がひたすら殴打するだけの刑罰である。かつてこの国には律という法律が制定されていた時代があり、罪人を罰する術として五刑というものが定められていた。笞(ち)・杖(じょう)・徒(ず)・流(る)・死の五つの刑罰がそれで、この中の杖刑がズンダ折に良く似ていることから、時期的にも方式的にもこれに近いものではなかったかとするのが学者間での趨勢である。
 しかしながらズンダ折には制定されたのち長い年月を経てその本質が変貌していったと思しき節がある。それは、処刑係がその処刑という概念や殴打といった行為よりも、そのやり方に重きを置きはじめたということだ。有り体に言ってしまえば、その処刑に「ゲーム性」を付与してしまったということである。
 ズンダ折の「ズンダ」の由来に関しては諸説有り、そのどれもが正しいようで正しくないようなものばかりであるとしか言えないのだが、おそらくは殴打時の音をあらわすオノマトペではないかと思われる。例えば古来「餅つき」という言い方をしていた一連の行為が、小野ジョージ史治教授によれば数百年前に若い女性たちの間で「ぺったんこ」というオノマトペから「ペタコ」と呼ばれはじめ、現在に至るまでその名称で指すことが一般的になっているのと同様の現象がそこにはあるのではないか。つまり、複数人の処刑係がリズミカルに被処刑者の身体を殴打する事によって生まれるグルーヴィなリズム、それが「ズンダ」なのではないか。では「折」とは何か。小野ジョージ史治理論によって被受刑者の発する呻き声「オッ」や「ウッ」の類が「折」と聞こえてそう呼ばれるようになったか。否である。そして、この「折」の由来こそがズンダ折におけるゲーム性を最も端的に表していると言えるのである。

       

表紙
Tweet

Neetsha