ライバックの戦闘センスはともかく、衣装のセンスは酷いモノだった。仮にも主君の次男の屋敷に来るのであるから、それなりの恰好はすべきだとジェイガンは思ったが……くたびれたいっちょらを着ているだけだった。
 最初は珍しい客人が来るというので、楽しみにしていたブランデンも、今の幽鬼のような姿を砂埃ごしに見れば、怯えるのも無理はなかろう。
「よぉ、アンタか」
「口のきき方に注意しろ。ここではお前は生徒なんだぞ」
「はいはい、そうですね」
 ずいぶんと様子が変わっていた。あのライバックが……? 彼は確かに傲慢で不遜な若者だったが、こんなやさぐれた人間ではなかったはずだ……
「とにかく、荷物をまとめて屋敷へ入れ」
「ああ」
 気のない返事をしながら、ライバックは荷物を引きずりながら屋敷の方へ向かって行こうとしている。ジェイガンの前をライバックが通った時、アルコールの臭いがした。
「待て、ライバック」
「なんだよ?」
「その荷物の中を調べる」
「武器ならこの拳銃だけだ」
 腰から取り出した黒いハンドガンも、どことなくくたびれて見えた。
「武器ではない。軍人というのは、存在自体が武器のようなものだ」
「そうだな」
「ただし、完全に制御されている必要がある。暴発を起こさぬように」
「その通りだ」
「では、その荷物の中から酒を出せ」
「全部?」
「全部だ」
「本当に全部?」
「一滴残らず出せ」
 ライバックは観念して、引きずっていた大きなトランク類をそのまま置いて、軽そうなペラペラのカバンだけ持って屋敷の方へ向かった。
「そんじゃ、邪魔するぜ」
 それだけ言い残すと、困惑する召使いたちを押しのけて屋敷のドアを開けて入っていった。
「あの人がライバックってひと……?」
「ええ、そうでございます」
「あの人、本当に父上のお気に入りの部下なの?」
 今の言動だけ見れば、7歳児でもただのチンピラにしか見えないようだ。
「少なくとも、以前はそうだったのですが……ふ~む……」
 受験勉強以前に、先が思いやられた。ブランデンも、あんなひとと一緒に過ごす羽目になって(しかも半年も)、少なからず父親に対して恨みの気持ちが増したのかもしれない。明らかに困惑した表情をしている。
 とにかく、ジェイガンはライバックの残したトランクを開けてみた。
 中身は全て酒だった。
sage