Neetel Inside 文芸新都
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その出来事が起こったのは毎日毎日変わらない彼女の無愛想な表情に僕も少し退屈を感じていた5日目の夜だった。店は昨日と明日の境界を越えて一時間したら閉店で、ちらほらと出て行く客たちに習うように、僕は最後に店を出た。もうこの頃には彼女の家も特定していて、いつものように後をつけるつもりで、僕は店の裏手に回ってその近くの電柱に身を隠した。でもその日だけ変わっていて、いつまでたっても彼女が出てこない。明日が早かったから、今日はもう帰ろうかと思い始めたとき、店先から爆発にも似た何者かの怒号が辺りに劈いた。僕には、ほんとうに『バババーン』って感じに聞こえたよ。びっくりしてすぐに入り口を覗いてみると、そこでは店長と一人の男が言い争いをしていたんだ。店長は興奮しているみたいで、顔を真っ赤に腕組みしながら日本語と中国語のミックス言語で説教しているようだった。男のほうは欧米風の身振り手振りで、演劇みたいに何事かを金切り声で叫んでいる。他人事とはいえ中々シュールな光景だったね。数分間その争いは続いた。若い男のほうが最後に泣き叫んでどこかへ立ち去ったとき、僕は大体の事情を察していた。どうやら男は例の女の子の昔の交際相手らしく、未練タラタラってやつでしょっちゅう彼女の仕事場、要はその店まで押しかけてくるみたいだった。見た目は線の細い、内向的な風体の青年だ。
僕はすこし彼のことが気にかかって、次の日、彼がまた同じように店に訪れて問答を繰り返し泣き喚いて去る背中をつけてみる事にした。ストーカーのストーカーってわけだ。まぁ始めはほんの気まぐれだったんだけど、つけているうち、彼は見覚えのある建物に入っていった。このときほど驚いたことはないね。そこは僕の大学だったんだ。しかもてくてくと歩いて彼は法学部の校舎に入っていった!
この国の司法が腐るわけだねまったく。ストーカーが大学で法律を学んでいるのだ!

       

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