■

連絡先を渡された後、お互い暇だったからその週の休日に喫茶店で会うことになった。なるべく知り合いに見つかりたくないっていうから隣町の喫茶店でね。結果から言うと、僕たちは意気投合した。同じ大学ということもあって共通の話題もそれなりにあったし、何より予想外だったのが彼はあの女の子の話題になると一気に饒舌になるということだった。
「そうか、いや恥ずかしいな。あんなはしたないところを見られてしまって」彼は顔をくしゃっと崩しながらまだ湯気の残るコーヒーをすすった。彼は社交的であったけど、どうやら彼女のことで相談できる友人はいないらしかった。いつごろからああして彼女へ接触をはかろうとしているのかと聞くと、もう三年にもなると語った。
「彼女と私は高校の同級生で、付き合いだしたのもその頃になるね。でも三年生の秋ごろからかな、彼女は誰かから心無い嫌がらせを受けて・・・・・・そのまま退学してしまったんだ。それからは一度も会えてなかった。すごく心配でね、彼女の自宅も知らないし。でも彼女があの店で働いていることを知って・・・・・・何度か行ってみたんだけど、ストーカー扱いされて門前払いってわけさ」
 自分がストーカーだという自覚はないようだったね。事実、そうして会うまでは気づかなかったけど、僕はこの彼の姿に見覚えがあった。実はこの男は僕が観察を始める前から、今日に至るまで店の周辺で、あたかもドラマの探偵のように張り込みをしていたんだ。
「たぶん、あの店の店主は何か勘違いをしているんだ。私は純粋に彼女を心配しているというのに。口でも直接弁解したんだけどね、なかなか理解の無い人だ。それにしても、彼女も事情を説明してくれればいいのに」
 彼は深く沈んだ顔で沈黙した。一々アメリカ人みたいにオーバーアクションをとるやつだったな。しばらく店の雰囲気を楽しんだ後、店を出た別れ際愉快そうな笑みで彼は僕に握手を求めた。
「それにしても君も物好きな人なんだね。見知らぬ他人の相談を受けてくれるなんてさ。いや、私はありがたいんだが」
 確かに成り行きとは言えど、そうなったことには少し自分でも不思議だった。実際僕はこの青年に好意的な感情を抱いていたしね。初めての同族に会えたという喜びの感情もあったのかもしれないけど、たぶん単純に、気になることは研究しないと気がすまないだけなんだ。