Neetel Inside 文芸新都
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ストーキングについて僕が考える三つのこと
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街をあるいていると、たまに、ものすごく可愛い子っているよね。例えば駅前あたり。ちょっと発展したところなら、誰でも一度はお目にかかったことがあると思う。そんな子とすれ違ったときなんか、何かの比喩表現とかじゃなく、みんなぱっと後ろを振り返って目を奪われるよね。「あぁ、すごく魅力的だなぁ」とか、俗な男なら「あぁヤりたい」なんて具合にさ、女の微かな残り香を鼻腔に感じながらね。ま、残り香はともかく、似たような経験はみんな共通してあるはずだ。
 可愛い子を見たとき、僕もそれらの例外じゃなくって、同じようなことを考える。ただ、普通のやつなら可愛い子の事なんて、せいぜい明日には忘れるんだろうけど、僕はちょっと特殊な性質みたいで、一度気になるととことん相手のことを知りたくなるんだ。それこそ体重、身長、スリーサイズはもちろんのこと、果ては体の黒子の数って。ま。異常だと自覚できているからまだ他の同病のやつよりはいくらかましだと思うけど。
 ごめん、話が逸れたね。とにかく僕はそんなやつで、要は変態なんだ。そして可愛い子を見かけたとき、必ずしてしまうことについて今日は話そうと思う。大体察してくれてると思うけど、そう、ストーキングだ。人間という種がこの世に誕生したときからある、歴史の深い行為さ。最近じゃ、テレビやネットのニュースなんかでよく耳にするんじゃないかな。ストーカー男に刺され女性殺害とか、さ。東京の三鷹のほうでもそんなのあったよね。けっこうな話題になってた。ああ、でも勘違いしないでくれ。僕は女の子を刺したり、危害を加えたりはしないから。あんなのはただの下種のやることだよ。ストーキングの枠を超え、ただの犯罪者に成り下がった人間さ。

     

 ストーキングの楽しさはもっと別なところにあるんだ。さてストーカーは大別すると二種類に分けることができる。人間同士の信頼関係の深さは、どれだけ互いのことを知っているか、と述べた人物がいるけど、ストーキング等の行為を経て相手のことを知り、自己の頭の中に存在する一種の偶像ともいえる相手に対し信頼を深めていく、というような思考のストーカー。これがひとつ目。僕なんかはこれだね。いうまでもなくそれは一方向的な信頼であって、とても信頼関係とはいえないわがままなものだけど、それでも僕たちはストーキングを繰り返し、なぜか相手という名の偶像と分かり合っていく気分に満たされていく。このプロセスがどうしようもなく快感で、ストーカーをしてしまうというわけ。
第二に、相手を心理的に追い詰めることによって快感を得るストーカーがいる。支配欲求とそれを忠実に行うことよって同時に満たされる自己肯定感からくるものだね。彼らは個人の日常生活では向けることのできない相手に、その倒錯した愛情を向ける。だからこの場合のストーキングは見知らぬ人間相手ではなく、僅かに日常から手の届く範囲、例えば知り合って間もない人物などに向けられることが多いね。
実際に、それらのストーキング行為の行き過ぎた例としてさっき言っていたストーカー事件が挙げられるね。僕なんかはちゃんと現実と脳内の区別はできているつもりだけど、彼らはきっと、自分の偶像と現実の相手とのギャップに耐えられなかったんだろう。後者のストーカーなら、支配欲の行き過ぎといえる。まぁ、ここで事件などを起こすか、きちんと割り切ることができるかがストーカーであるか単なる犯罪者であるかを分けるラインともいえるね。僕がストーキングを始めたのは、1998年の秋のことだ。あのとき僕はまだ学生で、埼玉にある大学に通ってた。そのとき出会った女性に僕は、まぁ恋慕に近い感情を抱いてしまって、ストーキングをしちゃったというわけ。そうだね、夜も長いから、今夜は君たちにそのとき起こったとある出来事について話そうかな。あ、恋愛ドラマみたいにロマンチックじゃないから、そこらへんは期待しないでね。でも怪談みたいに怖いわけじゃないから、蝋燭は持たないでくれよ。トイレに行きたい人はいないね。しばらく長くなるから、行きたい人は今のうちに行って来て。
 さあ、もう準備はいいかな。なら始めようか。僕の若い頃、薄暗くて、でも確かに輝いてみえた青春の一ページ。そうか、あれからもう17年になるのか。

     

 ■

 17年前の僕が大学生だった頃、世間は浮き足立っていた。知っている人も多いと思う、1998年といえば、長野で冬季オリンピックが開催された年だ。さっきも言ったけど、僕は埼玉のほうの大学に通っていて、実家から遠いこともあったから、大学の近くの安アパートを借りて下宿していたんだ。位置的にも長野に近いこともあって、秋にもなると、しょっちゅうそれが話題を占めていたな。まぁ僕は貧乏学生で、金も遊ぶこともなかったせいか友達はいなかったから、話し相手といえば大学の講師か食堂のおばちゃんくらいだったけど。そのころの僕の生活は、ほぼ毎日といっていいほど研究室に篭って、色んな実験の繰り返しだった。俗世間なんておかまいなしって感じにね。今から思えばそのせいで友人ができなかったのもあるのかもしれないな。
 僕は頭の中が実験のことでいっぱいで、他のことにかまける余裕がなかった。食事といえば大学の学食。近いし、50円のかけうどんがあるのが気に入っていた。僕の生活サイクルは、朝早く大学に行き、夕方まで実験をして、時間が空くとかけうどんを食いにいき、これの繰り返しだった。今にして思えば本当に不摂生だよね。よくも一度も倒れなかったものだと思うよ。そんな生活を見かねたんだろうな、ある日僕のゼミの準教授がまだ漱石の紙幣を数枚出してこういったんだ「いつ倒れられて病人になられても僕は責任を持てない。でも後々僕に文句を言われても面倒だ。たまにはかけうどんではなく、外で栄養のあるものを食べてきなさい」ってね。良い先生だったよ。ちなみに彼は今何かの論文が評価されて、けっこう出世したみたいだ。それはさておき、数枚のお札を渡された僕は困った。何せそこいらの地理を全然知らなかったんだ。今みたいにスマートフォンでもあれば良かったんだけど、当時はまだウィンドウズ98が出たばっかりの時代だ。篭りっきりだったしね、精々わかるのは駅前のコンビニエンスストア。お金をそのまま僕の財布の肥やしにすることも考えたけど、そんなのは僕の美学に反するからね。まぁとりあえずふらつく足取りで大学の外に出たよ。
 さて、適当な繁華街に着くと、目の前には多種多様な飲食店が広がっていた。日本食、中華、コリアン、フランス、ロシア、インドタイエスニック。挙げればきりがない数の料理店は僕を悩ませた。正直食えればどこでもよかったんだけど、教授には栄養のあるものを食えと言われたからね。でも貧乏学生の僕はどこが栄養上体にいいのかなんてさっぱりだった。和食がそれに関していいイメージはあるけど少し金額的に心もとない。ならこの中で僕が唯一食べたことのある料理を選ぶことにした。
 日本国民になじみの深い、中華だ。中華といえば炒飯餃子春巻き麻婆茄子、八宝菜にレバニラ炒めと聞いてるだけで腹が減るようなものばかりだものね。健康にどうかはわからないけど多量にカロリーを摂取するという意味ではベスト選択だと思えた。やせっぽちだった僕にはぴったりだろ。
 そんなわけで僕は数百メートル先にある中華料理屋に入った。ちなみにその中華料理屋の名前がわかるかな。みんな知ってるはずだよ。豚肉一日7000キロ、卵一日5万個、鶏肉3000キロ、餃子一日百万個。もうわかったよね。
 そう、万里を越えるあそこさ。

     

 ■

 店の扉を潜ると、勢いのいい出迎えの声がいくつか飛んできた。店はかなりすいていて、それと比例してか従業員の数も少なかったよ。まだ夜というには空も明るかったしね。厨房のほうからそそくさと女の子が出てきて、僕の接客にまわった。だけどその子の接客は、接客というにはあまりにも、その、無愛想だったんだ。何も言わず、彼女はカウンターのほうを指差した。どうやら彼女のなりの、そこにお座りくださいってサインらしい。少しムッとしなくもなかったけれど、別にカウンターで構わなかったし、その通りにしたよ。
テーブルの手前には簡素なメニュー表があって、金はあったから、その中から適当に色々頼もうと思った。向かい側の厨房では、重そうな中華なべをリズム良く振っている中年がいたから、彼に向けて数品目の名前を飛ばした。返事とばかりに油と火が弾け合う、良い音がしたな。
しばらくすると店員が料理をお盆に運んできた。さっきの女の子だった。あいも変わらない無愛想な表情で料理を僕の前に置いていった。また去っていく彼女の後姿を見つめていたら、厨房の中年がいった「悪いねお客さん」。ひどく聞き取りにくい発音で、それは彼の中国訛りなのだと顔を見たらなんとなく分かったよ。「あいつは口がきけなくてね」そう言った後、彼が女の子のほうに目をやった。たぶん聞こえていたんだろうな、申し訳なさそうな顔で彼女がこちらの会話を節目がちに見ていたよ。
後で調べたことなんだけど、どうやら彼女は高校時代のいじめが原因のストレスで重度の発話障害にかかっていたそうだ。その学校を中退してしばらく引き篭もりになっていたらしいんだけど、ご両親の知り合いだったそこの店の店主が心配して、社会復帰のためにも店員として雇ってあげたらしい。ちなみにこのときの中年男性が店主。親切な人だよね。
僕は彼女に強烈な興味を抱いた。知的好奇心といったほうが正しいかな、20年目に入った人生の中でも、僕のそれまでの周囲の人間には彼女のような障害を持つ人間はいなかったし、それに、これは不合理な理由なんだけど、何故か彼女に惹きつけられるような感じがしたんだ。何ていえばいいのかな、よく初対面の人物に会ったとき、ビビッとくるなどという言葉があるよね。今から思えばそれの現象に近いものだったんだろうと思う。それからはふんわりした湯気をたてるレバニラ炒めや、餃子や炒飯なんかを口いっぱいに頬張りながら、彼女の動きを観察していたよ。
結局店内にいたのは僅か数十分余りの時間で、ちょうど空が葡萄色に染まった頃だったよ。入れ違いに店の中に入っていく人々を尻目に、僕は頭上の空を見上げながら、懐の銭勘定をしていた。まだお金には余裕があるってわかったとき、僕は大学には戻らず、そのまま自宅への帰路へついた。まだ研究室でやることは多いにあったんだけど、その時の僕は精神と、丹念に体の内臓全体に高揚感を纏っていて、研究どころじゃなかったんだな。
翌日から僕は彼女を観察することに決めた。これがストーキングの始まりさ、この頃は自覚はなかったけどね。ご飯も店が開いている昼と夜に摂ることにしたよ。正直なところ、食堂のかけうどんにもいい加減飽き飽きしていたんだ。

     

 ■

次の日の店に行ったら、昼時にも関わらず小汚い店内はまたもひと気がなくて、ぽつぽつと黙って席に散らばる幾人かの客の姿が少し寂しげに感じられた。どうやらあまり繁盛はしてないみたいだった。例の彼女が見えなかったからきょろきょろと目で探していたら、接客に来た店主は僕のことを覚えていたみたいで、少しだけ朗らかな雰囲気でこう話しかけられた「あの子なら今日は夕方からなんだ」。僕は下心が見透かされたのが少しばかり恥ずかしくなって、俯き加減に昨日のカウンターへと向かったよ。また適当に注文を終えて淡々と作業を繰り返すように出されたものを食べていると、暇を持て余しているのか、店主が僕に話を振ってくる。「きみ、学生?」「もしかしてそこの大学かい」ってね。そうだと答えたら、少し困ったみたいな顔をして「学校はたのしいか」と聞かれた。僕はあいまいに頷くだけで、その会話は終わったけど、もしかしたら彼は学校というところから離脱してしまった、あの女の子の事を憂いていたのかもしれないな。
昼は一度出直して、夜、確か10時を過ぎたぐらいに僕は晩ご飯を食べに店に向かった。そうしたらあの子がいて、店が閉まる時間まで僕は彼女の観察を続けたよ。もちろんなるべくばれないようにはしたよ。あくまでさりげなくね。
その日の観察ではわかったことが二つあった。ひとつは、彼女は実はけっこう可愛いんだってこと。僕の主観からしてってことで、一般的な美的感覚からするとそうでもないかもしれないけど、飾らない花のような素朴な魅力があると僕には感じられたよ。事実彼女は化粧っ気なんかひとつもなくって、髪の毛も気を使っていないふうだった。そんな中に潜んでいる価値があるとわかったんだ。
もうひとつは、彼女はまったく笑わないってことだ。少なからず入ってくる客たちにも、彼女は昨日僕に見せたような無愛想な表情を貫き通していた。いや、この表現は少し違うね。彼女は笑顔とか、そういうような良い表情ってものができなかったんだろうな。世の中には、死ぬまでにものの一度も笑わない人間なんていないよね、少なくとも僕はそう考えているけど、きっと彼女だって笑った経験はあるだろう。でも何故笑わなくなってしまったのかは、そのときの僕には察するに余りあったよ。

     

その出来事が起こったのは毎日毎日変わらない彼女の無愛想な表情に僕も少し退屈を感じていた5日目の夜だった。店は昨日と明日の境界を越えて一時間したら閉店で、ちらほらと出て行く客たちに習うように、僕は最後に店を出た。もうこの頃には彼女の家も特定していて、いつものように後をつけるつもりで、僕は店の裏手に回ってその近くの電柱に身を隠した。でもその日だけ変わっていて、いつまでたっても彼女が出てこない。明日が早かったから、今日はもう帰ろうかと思い始めたとき、店先から爆発にも似た何者かの怒号が辺りに劈いた。僕には、ほんとうに『バババーン』って感じに聞こえたよ。びっくりしてすぐに入り口を覗いてみると、そこでは店長と一人の男が言い争いをしていたんだ。店長は興奮しているみたいで、顔を真っ赤に腕組みしながら日本語と中国語のミックス言語で説教しているようだった。男のほうは欧米風の身振り手振りで、演劇みたいに何事かを金切り声で叫んでいる。他人事とはいえ中々シュールな光景だったね。数分間その争いは続いた。若い男のほうが最後に泣き叫んでどこかへ立ち去ったとき、僕は大体の事情を察していた。どうやら男は例の女の子の昔の交際相手らしく、未練タラタラってやつでしょっちゅう彼女の仕事場、要はその店まで押しかけてくるみたいだった。見た目は線の細い、内向的な風体の青年だ。
僕はすこし彼のことが気にかかって、次の日、彼がまた同じように店に訪れて問答を繰り返し泣き喚いて去る背中をつけてみる事にした。ストーカーのストーカーってわけだ。まぁ始めはほんの気まぐれだったんだけど、つけているうち、彼は見覚えのある建物に入っていった。このときほど驚いたことはないね。そこは僕の大学だったんだ。しかもてくてくと歩いて彼は法学部の校舎に入っていった!
この国の司法が腐るわけだねまったく。ストーカーが大学で法律を学んでいるのだ!

     

さてまた次の日だ。僕はその日の昼だけ店に行くことをやめて、この青年に接触を試みることにしたんだ。彼はお昼は学食で済ませるみたいで、彼が座った対岸に僕も陣取った。薄い警戒の目でこちらを窺う彼に軽く挨拶した後、直接先日の店での一件について話しかけた。彼はこちらが見て取れるほどかなり動揺した様子で、ぱっと僕の口を塞いだ。
「すいません、誰かに聞かれたらまずい」周囲を見渡しながら彼は僕にそう告げた。午後二時のカフェテリアは空いていて、少なくとも僕たちの周りには人はいなかった。「あの、あなたは誰で、何が目的で私に話しかけてきたんですか」眼前の青年は早口かつ小声で言う。さてなんと返すか暫し僕は迷った。元交際相手に実は彼女のストーカーだなんて答えるわけにもいかないだろうしね。だから僕は咄嗟の思いつきで言った。僕は君の味方だ、あまりにも君が不憫に思えてならないから解決に来てやった、ってね。いやまぁ自分でもよくわからないことを言ったものだと思うけど、どうやら肝心の彼の心に良い物を与えることができたようで、口びるを塞いでいた手の平が離れていった。
「私と彼女の関係も」
 僕は頷いた。彼は小さい顎に手をやってしばらく考える素振りを見せると、気障に胸元のペンを取り出しメモに数列をしたためるとそれを一枚ちぎって僕の手元に寄越した。「私の電話番号です。今度、一度ゆっくり語らいましょう。お手透きの際にご連絡ください」
 そう言って立ち去る彼に、昨夜の泣き喚く彼の面影は無かった。どうやら僕の考えていた彼と本当の彼は違ったらしい。でもこんなふうに性格の二面性があるやつが、ストーカーの特徴でもあるんだ。

     

    ■

連絡先を渡された後、お互い暇だったからその週の休日に喫茶店で会うことになった。なるべく知り合いに見つかりたくないっていうから隣町の喫茶店でね。結果から言うと、僕たちは意気投合した。同じ大学ということもあって共通の話題もそれなりにあったし、何より予想外だったのが彼はあの女の子の話題になると一気に饒舌になるということだった。
「そうか、いや恥ずかしいな。あんなはしたないところを見られてしまって」彼は顔をくしゃっと崩しながらまだ湯気の残るコーヒーをすすった。彼は社交的であったけど、どうやら彼女のことで相談できる友人はいないらしかった。いつごろからああして彼女へ接触をはかろうとしているのかと聞くと、もう三年にもなると語った。
「彼女と私は高校の同級生で、付き合いだしたのもその頃になるね。でも三年生の秋ごろからかな、彼女は誰かから心無い嫌がらせを受けて・・・・・・そのまま退学してしまったんだ。それからは一度も会えてなかった。すごく心配でね、彼女の自宅も知らないし。でも彼女があの店で働いていることを知って・・・・・・何度か行ってみたんだけど、ストーカー扱いされて門前払いってわけさ」
 自分がストーカーだという自覚はないようだったね。事実、そうして会うまでは気づかなかったけど、僕はこの彼の姿に見覚えがあった。実はこの男は僕が観察を始める前から、今日に至るまで店の周辺で、あたかもドラマの探偵のように張り込みをしていたんだ。
「たぶん、あの店の店主は何か勘違いをしているんだ。私は純粋に彼女を心配しているというのに。口でも直接弁解したんだけどね、なかなか理解の無い人だ。それにしても、彼女も事情を説明してくれればいいのに」
 彼は深く沈んだ顔で沈黙した。一々アメリカ人みたいにオーバーアクションをとるやつだったな。しばらく店の雰囲気を楽しんだ後、店を出た別れ際愉快そうな笑みで彼は僕に握手を求めた。
「それにしても君も物好きな人なんだね。見知らぬ他人の相談を受けてくれるなんてさ。いや、私はありがたいんだが」
 確かに成り行きとは言えど、そうなったことには少し自分でも不思議だった。実際僕はこの青年に好意的な感情を抱いていたしね。初めての同族に会えたという喜びの感情もあったのかもしれないけど、たぶん単純に、気になることは研究しないと気がすまないだけなんだ。

       

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Neetsha