Neetel Inside ニートノベル
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 やっぱり、ちょっとやりすぎたかな……
 一人竜に乗って空を飛んでいると、どうしても考え込んでしまう。あの二人は甲国軍の幹部とはいえ、どう見ても子供だった。もちろん、ただの子供に爆殺魔法をぶっ放すほどルーラ・ルイーズは大人気がないわけではなかった。
 あれは爆破魔法と言っても、脅しのための魔法であり煙と音しかでない。強力な爆発魔法は触媒とか魔導書による呪文詠唱などメンドクサイものが必要であり、そんなものはこのミシュガルド大陸では容易に手に入らないものだ。
 とにかく、空砲の爆破魔法で脅してやろうと思っていただけなのに、まさかあの高さから飛び降りるとは思ってなかった。
 それにしても、今回の任務はなんだか気が乗らへんなぁ、とルーラは漠然と考えていた。あのナノコとかいう子に思わず話しそうになってしまったので、誤魔化すのに苦労したわぁ……アレアレとか連呼したから、絶対アレな人に思われてるやろうなぁ……それにあいつら、合図の狼煙も思いっきり見られとるやんけ。適当に砂嵐とか言ってごまかしといたから大丈夫やと思うけど……
 今日の仕事はただの運送ではなかった。要人が集中便乗している、甲国空中戦艦への攻撃計画に必要な物資の秘密輸送――確かに、ここで甲国軍の要人を一気に殲滅できれば、先の亜骨大戦(アルフヘイムと甲国の全面戦争)での復讐を果たせるかもしれない。ただ、死んだ仲間が求めていることってホンマにそんなことなんかなぁ、というのがルーラの正直な疑問だった。
 あいつらが死んでまで生かしてくれた命を、また命を奪うことに使っていいんか? 
「なぁ、本当にいいんかなぁ?」
 思わずクスちゃんに問いかけてしまったが、クスちゃんはギョロついた眼を軽くこっちに動かして
「ぎょえ~~」
 と奇声を発しただけだった。
 こいつみたいに、何も考えんと生きていけたらいいのに……人間(エルフや亜人、獣人含む)ってなんでこんなにメンドクサイんやろ。賢さって何なんやろ……
 そうや! この荷物を町まで運んだら任務も終わりやし、そしたら戻ってさっきの姉妹探したろ。もし無事に抜けられとったらいいけど、そうでなかったら、絶対助けたろ。
「なぁ、これっていい考えやと思わん?」
 クスちゃんは相変わらず目をギョロつかせながら、それに答えるようにブリブリと返事をした。
「うわ、お前なんやねん、それは!」
 肛門から垂れたクスちゃんのウンチは、そのまま風に吹かれながら地面へと落ちていった。やがてこのウンチが、下の世界で波乱の幕開けとなることも知らずに……

       

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