Neetel Inside 文芸新都
表紙

大学にて
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毎日、つまんねぇな

真は屋上でタバコを吸い始めた

次の授業もつまんねぇんだよなぁ‥‥
でも、輪をかけてつまんねぇのが
グループワークで満と発表しなきゃいけねぇんだよ

ま、透がいるから行くようなもんで

はぁ‥‥ただただダルい

真は毎日さほど変わらない日常にイライラしていた

卒業が近くなったら就職
就職のための資格


「しなければならない」ことが年を増す毎に増えて
楽しかった日に帰れない

屋上に鍵を作って忍び込み
タバコを吸ったり、大声を出したり、昼食を食べたり

小さな自由を探していた

     

元カノの叶は透になびき始めてるしな

はぁ‥‥マジでサボりたい

タバコをほとんど一本吸い終わった時


なんかいきなり暗くなったな
上を見上げる真


結構小さい?
‥‥いや、でかいな

なんだ?‥‥

真は次の瞬間、タバコを捨てていた


人だ、大人一人がすごい勢いで降ってきた


いけるか?あんだけ勢いついてると
できるか‥‥


降ってきた大人を全力の腕力を使って受け止める

しかし、勢いがまだ残る

真は床に体を預け、ゴロゴロと残りの力を分散した

     

「いった‥‥」
やべぇ、肩やっちゃった
「おい、おいって!!しっかりしろ!!」
無事だった左肩で叩く真
女の子はうなり声を上げているが
真のおかげで軽症だったようだ


それにしても、美人だな
映画とかで最近見る女優とそっくりだ

名前何だったっけ

そんなことを思っていると女が意識を戻した

「いた‥‥くない?」
女が不思議がっていると真がわけもわからず怒り始めた

「バカッ!!お前、なんであんな上から
てか何やってんだよ!!危ねぇだろ!!」

女はただただびっくりしている
「助けてくれたんですか?」
「あぁ‥‥いった‥‥」

肩がマジで痛い

「私のせいで肩、怪我したんですか?大丈夫ですか?」
「マジで、そういうのいいからさ」

女は真の肩を触りはじめた
「‥‥にすんだよ、やめろって、いった!!」
「ここですね?いきます」
いきます?

女の手から緑色の優しい光が出始めた

温かい

     

「‥‥はい、動かしてみてください」
腕を軽く回す
「お、痛くねぇ!‥‥でもちょっと痛いか」
「無理にしちゃダメですよ、一応仮にしか治癒してませんから」
「治癒ねぇ‥‥あんた何もんだよ」
「私は‥‥」
モジモジして話そうとしない女の子

「あ!やべ、今日何曜日だよ」
「金曜です」
「いっけね、昨日バイト急に休みになったから曜日感覚なかったわ
ちょっと、行ってくる。大事な先生の講義だ」
「はぁ」
「お前、休みだろ!そこでいろよ!絶対戻ってくるから!わかったな!」
「はい」
バタバタと校内を走り、いつもの教室まで走り抜ける

あの先生の授業だけは楽しみにしてるんだよな
説明が要点だけをわかりやすく的確に俺の興味をそそうようなことだけ言うから
先生に気に入られてるみたいだし

     

しんど‥‥ここ、校舎の建て替えかなんかでエレベーター修理してるし

バテながら教室のドアを開ける
時間ギリギリに入ったからみんな先生と間違えて
注目を浴びる
「あ、真じゃん!何何、どしたのよ時間ギリ珍しすぎない?」
「透…ハァ」

透なら話を分かってくれそうだ
「透、これから言う事頼むから信じてくれ」
「え?」

絶妙なタイミングで沢尻先生が後ろから入ってきた

「お、白木君じゃないか、どした?そんな息切らして?」
「実は…」

教室に入るタイミングから間違ってたけど
何故か一斉に注目を浴びることになって

俺の話なんか誰も信じてくれそうにないと
「ハァ、何でもありません」
言葉を飲んだ

しかし、沢尻先生は優しい言葉をかけてくれた

     

「そんな慌ててさ、毎回授業真面目に聞いてくれてるし
なんかあったんでしょ、行っといで」
「えっ、でも」
「この前のリポートよく出来てたし
いつも熱心に授業出てるからこの時間だけ出席ね
あ、でもほかの先生の手前あるなぁ。うーん」
「今日も1日の最後、小テストありますよね?」
「うん、あるよ」
「昨日、予習したんで、それで埋め合わせしていいですか?」
「あーなるほど、その手があったか。わかった」

温和な先生で助かった
「ありがとうございます、事済ませてすぐ戻ります」
「うん、あ、廊下は走らずにね」
「はい」

教室を先生の見える廊下まではゆっくり走って
見えなくなるところから
また走りに走った

そんな焦らなくても飛んで逃げるわけじゃないけどさ

‥‥ん?何だろ、あの子‥‥何もんだよ

何かに気づきかけたけど、走ってて忘れてしまった
変わった心境で屋上の階段を駆け上がる

古いドアがキィ、と軋んだ音を立てて呼び込む

さっきの女の子は同じ体制で待っていた

「‥‥あ、おかえりなさーい」
「ハァ、ハァ、あー!もう無理!」

走りまくって疲れてしまった
屋上で横になる

「ハァ…あんた、何もんだよ、空から降ってくるとか
ハァ…ありえねぇだろ」
「私ですか?私は…」
「あーもー勿体ぶってないでさっさと言えよ!」

屋上で倒れ込む事になるとは思わなかった

「‥‥ん?小瓶?」
薄い綺麗な青色の小瓶が手に当たる
「ヒビ入ってるし、ま、そりゃあの高さだったらな」

今度は女の子の方が服を触って血相を変えて真に駆け寄る

「それ、私のです!帰して!」
「やだ」

小学生の喧嘩のように上手く女の子をかわして小瓶は渡さない

「この瓶、そんな大事なの?」
「大事だから!帰して!」
「そんなに追っかけ回されちゃったら落としちゃうカモ」
わざとらしく小瓶をブラブラと落とす素振りを見せる

謎の女の子は急に大人しくなった
「うん、素直でよろしい
じゃ、そのまま素直に話し合いに答えてくれたら
コレ返してあげる、でもチャッチャとね、俺、時間ないから」

「‥‥はい」
「まず、お名前は?」


     

「製造番号7138」
「…は?」
落ちて頭打ったのか

「待て待て、まず、『人間』だよな?」
落ち着け、落ち着け

「いえ、『天使』です」
「…え?」

ふざけてんのか?

「さっき、力使ったじゃないですか」
「…あぁ、肩のやつ」

「はい、話しましたんで、瓶、帰して」
女の子は手を伸ばす
油断してたけど、うまくかわす

「ちょー、まだだめ」
女の子は眉間にシワを寄せている

「俺、『天使』とか信じねぇからよくわかんないけど
羽根とか生えてるんじゃないの?こう、パタパターって」

女の子は言うのを渋ってる

「人間が創った『天使』は人との違いを作るために
わざと羽根とかつけてるんで、諸説あるでしょうが
人間と変わりません」
「へー、そうなんだ」

「その小瓶は‥‥天使しか持てなくて、いわば祝福の塊です」
「祝福の塊?」




     

「例えば、叶って欲しい『願い』があるとしますよね?」
「うん、あ、分かった。コレで願い叶えるんだ」

「いえ、天使は個人を努力なしに
幸福にしてはいけないことになってます」

「天使って幸せにしてくれるんじゃないの?」
「天使は努力してる人にしか笑顔はふりまきません」

「頭こんがらがってきたけど、あんたらの神さまはそんな冷たいやつなのか」
「いえ、神は全能です。神は『運』さえも左右します」
「よく分からなくなってきた」

「例えば‥‥世界には貧しくてどうしようもない国がありますよね?
努力どうのこうのじゃなくて」
「あるな」
「でも、人の幸福は規定量があるんです。
貧しい国では微量のお金でも幸せなんです
逆に豊かな国でも欲張りになって不幸に感じる人が出来ます」
「え、そうなの?」

なんか話がおっきくなってきた

「全部の国を見てる間はありません。忙しすぎて無理です
そこで天使の登場。天使は努力してる人の側へ行って
世の中が狂わない程度、その人を幸福にします」
「え、でも、そんなのしたら」
「察しがいいですね。天使同士では争いになってしまう
そこでその小瓶の登場です」
「コレ?‥‥え、そんな大事なの、コレ?」

黙って頷く天使
「マジ?」

「天使が察してこの瓶の色の濃さで願い事の強さを決めます
色が濃い方が優先して願い事が叶います」
「へぇー、この小瓶がね」
「その小瓶、最近もらったばっかりの1番色の濃い瓶なんです」
「あ、だから必死だったわけか」

なるほどねー

「じゃ、約束したし、そんな大事なの割っちゃダメだから返すわ
俺、持ってても意味なさそうだし?」
「ありがとうございます」

天使に濃い瓶を返す


     

しかし‥‥
「自分から『天使』って言うのも怪しいなぁ
空から降ってきたのはビックリしたけど」
信じてもらえないからふてくされてる自称、天使
嘘をつく体質ではなさそうだ
「ホントなんですよ、治癒はできるんで」

それでも胡散臭いんだよなー、申し訳ないけど

「あ、悪いんだけど」
「はい」
「俺、今授業出てきてて、大事な授業だから行きたいんだ
んで、話、平行みたいだから、昼過ぎに講堂で昼ご飯食べるから
俺が納得出来そうな《天使の証明》の話、考えといて」
「考えときます」
「よろしく!40分に授業終わったら3号館の1階行ってて!じゃ!」
しぶしぶ手を振る天使
「はーい」

     

ヘトヘトになりながら、教室に戻る
沢尻先生は授業中なのに声をかけてくれた
「‥‥あ、白木君じゃないか、急いでたこと終わったの?」
「はい!」
「うん、わかった、予習してたら分かるかもだけど、一応聞いといてね」
沢尻先生は相変わらずマイペースだった

沢尻先生と約束していた小テストは満足できる結果になりそうだった
小テストの間、さっきの女の子について考えていた

その後はすぐに昼休憩となり、自称天使に会いに3号館まで行った

天使は他の生徒と分からない程、馴染んで待っていた
俺に気づいて手を降る

「先程はどうもですー。そういえば私、お名前伺ってませんでした」
「俺?俺は白木真。白木君て堅苦しくよばれるのいやだから、真で」
「分かりました」
「んで、あんたをいちいち製造番号ナントカって面倒だし怪しまれるから、天使といえば!『愛と平和』だから、アンタ、今から愛ね!OK?」
「‥‥」
キョトンとする愛

「ダメか?」
「いえいえ、日常に今まで溶け込んでいて仮の名前はあったんですけど、それ以外だとなんだか新鮮で。嬉しくて!愛ですね、分かりました!」
愛はホンワカと嬉しそうだった

「んじゃ、とりあえず飯食べてから考えるか」
「はい」

     

食堂に着いた2人
真は少し考えて愛に尋ねた
「ちょっと待ってくれ」
「はい」
立ち止まる愛

「よく考えたらさ、天使ってお腹減るの?てか飯代は?」
「あ」
忘れていたようだ


「食い逃げじゃん!あぶねー、気づいてよかった」
「お腹は減りません、でも」
「でも?」
「全く食べれない訳ではありません」
「ん?」
どういうことだ?

「天界では、不自然にならない程度に
人間と同じ食事をするように言われてますが」
「うん」
「みんな、私が何者か分かったら
同じを質問して、ご飯くれないんです」
「へー」
そこそこひでぇのな

「だから」
じーっと学食の端のお惣菜パンを見つめる愛
「これ、食べてみたいわけ?」

愛は無意識だったのか(大変分かりやすかったが)
平然を装う
「いっ、いえっ、あの!バレたら大変なので!」
「大声出した方が余計にバレると思うぞ?」

急にしょげる愛

なるほどね、愛は嘘つけないのか

「ま、色々珍しい話聞けたし、今回はおごりで」
「えっ、いいんですか?」
口角が上がっている愛
「ん、いいぜ、好きなの選んでこいよ」
「やった!ありがとうございます!わーい!」
「黙って選べよ、恥ずかしいから」
パンで喜ぶってガキか

真剣にパン一つで悩んでいる愛を尻目に
食べ飽きた学食をトレイに乗せてゆく真

「決まったか?」
「はい!」
「‥‥ツナマヨパン?」
悩んでた割には、意外と普通すぎるだろ



ツナマヨパン、1個120円ナリ
「‥‥いいの?これで」

「私、ツナの味だけが想像出来なくて
油があってお肉みたいとも聞きますし、和風の魚風味とも聞きますし
そこにマヨネーズでしょ?
マヨネーズって卵とお酢と油で出来てるんですよね?
酸っぱいのかなぁ、やっぱり卵なのかな?」

ツナマヨパン一つをそこまで考えたことなかったから
何とも言えんが
「期待通りの味じゃねぇかもだけど、ホントにそれでいいの?」
「はい!」

んじゃ、買うか

俺はカツ丼大盛り380円
計500円だった




     

空いている席に座る
「んじゃ、とりあえず食べてから考えるか」
「はい、いただきまーす」
弾けんばかりの笑顔でツナマヨパンを頬張る愛
「味、どーなの?」

口元を抑えつつ、上機嫌の愛は嬉しくて話さずにはいられないようだ
「ツナって、ホントに油でお肉みたいですね
あ、でも噛んだら魚だ、不思議
マヨネーズも美味しいー!」

‥‥なんか愛が犬だったら
ちぎれるぞってぐらい尻尾振ってそうだな

「よかったな」
「はい!」
そんな愛を尻目にカツ丼を食べて話は本題に移った

     

「ごちそうさまでした」
「ん、ごちそうさまでした」

何から聞くかな

「とりあえずさ、さっき聞いたのはちっちゃい小瓶の色の濃さで
人の努力を後押しするってことだったと思うけども」
「はい」
「わかりやすくさ、証明してくんない?」
少しだけ申し訳なさそうに眉間を寄せて俯く愛

「頑張ってない人の願望は聞いちゃダメなことになってるんです、ごめんなさい」
「厄介そうだな」
「すみません」

頑張る、頑張らないで
決まること、かぁ

要は環境、だろ?

「雨、降らせてよ」
「いきなりだと、真さん以外の晴れを願ってる人が勝ってしまいます」

「んじゃ、お金、増やしてよ」
「世の中が狂う事は禁止されてます」

「えーと‥‥簡単なメシとか」
「手品師ではないですし、勝手に生き物を殺せません」

「うーん‥‥人間関係を豊かにしたい、とか?」
「本人の為にそれは人任せで何とかしてはいけないんです」

「あー、もー、マジでどうすんだよ!
意外とねぇし!」
「すいません‥‥」


     

「うーん‥‥」
「うーん‥‥」
おいおい、考えてなかったんかい

「何唸ってんの?」
「透」
相変わらずマイペースな透は
学内のコンビニでサンドイッチを買ってきていた
「隣、いい?」
「あ、はい」
「ありがとう」
モソモソとサンドイッチの袋を開けて食べ始めた透

「それにしても真、すげー美人さんどこで捕まえてきたわけ?」
「いや、さっき言いかけてた話に戻るんだけどさ」
チラっと愛の方を見てみると
愛は眉間にシワを寄せて
強く目をつぶって「何か」を言われるのを拒んでいる

「あー‥‥」
「?」
透は今までの話の流れが急に遅くなったので
疑問に思っているようだ

それを尻目に愛は
「実は、最近入ってきたばっかりで
さっき忙しいとは知らずに学内の色々案内して貰っちゃって」
「ふーん」
うまくごまかせた、か?
「名前は?」
「愛です」

透には悪いけど色々探り入れられても面倒だな
「な、透」
「うん?」
「俺の場合さ、頑張ってることを
さらに後押しするような事ってない?」
「え、どしたの?いきなり」
「え」
あ、やべー、墓穴

「真さんが得意な教科と私が得意な教科との情報交換です」
愛はすかさずフォローを入れてくれた

「あー、なるほど」
愛のフォローのおかげで透は納得したようだ

     

「頑張ってることを後押しねぇ‥‥」
「俺が更に意欲が増すような‥‥」
黙って見守る愛

「手っ取り早いのは
さっきの沢尻先生からなんか教えてもらうかだな」
「沢尻先生?」
まぁ、最近真面目に頑張ってるわな

何かを思い出したかのように透は喋る
「さっきのテスト、どうだった?」
「予習してたから何とか」
「いーなー!あんな重箱の隅つついた様な問題、ひでーよ
お前、1人でサクサク解いてたみたいだけど皆唸ってたんだからな」
「そーなの?」
ちょっとマニアックな問題かなと思ってたけど
深く考えなけりゃ簡単なのに

「とにかくさ、沢尻先生の事なら上手くいくんじゃね?」
「例えば?」
「俺に聞くなよ、大学生なんだから、自分で考えなさいな」
ごちそうさまでした、と席を立った透

「んじゃ、俺、先生にコビ売ってくるわ」
「お前、そーゆーとこ相変わらずだな」
「ははっ、ちゃんとわかってるよ、じゃ!」
透はそそくさと行ってしまった

「沢尻先生か」
「さっき仰ってた『大事な講義』の先生ですか?」
「そーそー、心理にまで組み込んだ作品の読解が面白いからさ
だんだんマジになってきて」
「なるほど‥‥では、そこら辺で何とかしてみます」
「何とかって?」
「勉強が終わったら毎日、直帰されてるんですか?」
「いや、ここの図書館、結構いい本があって
そういえば、この前頼んどいた本が来てるから取りにいかなきゃ」
「分かりました。では午後の授業後、いつも通り、行ってきてください」
「え、それで、なんか起こるわけ?」
「行けば分かります」
悪意のない可愛い顔してキッパリと告げる愛
「分かった」

     

「じゃ、とりあえずどうしよっか
さっきの授業で最後だったから
俺、図書館行ってる間‥‥どっかで待っててくれる?」
「はーい」
「どこがいい?」
「ペットショップがいいです」
愛がペットショップか、なんか似合うな

「分かった、図書館で『何か』起こるのに
そんな時間はかからないよね?」
「はい」
「んじゃ、行ってくるわ」
「はーい、いってらっしゃーい」
微笑んで小さく手を振って見送る愛

       

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Neetsha