メゼツたちはアルフヘイムのアーミーキャンプに招待され、集会所でイーノ救出作戦を練っている。メゼツは今更イーノがすでにこと切れていたと言い出せずにいた。さらにメゼツをイラつかせたのは、エルフたちが信用しきってキャンプの中を案内したことだ。無防備すぎる。メゼツはキャンプの見取り図が書けるように頭に叩き込んだ。
ティータイムに紅茶とチーズタルトでもてなされ、メゼツはすっかり油断していた。
「諸君、救出作戦を前にはっきりとしておきたいことがある。正体を偽っているものがいる。あまり考えたくはないけど、この中にスパイがいるんじゃないのか」
クルトガがこう言い出したとき、少し安心していた。メゼツほどスパイに向いてない人間もいない。つい本音を漏らしてしまうし、人を騙すことに耐えられる精神は持っていなかった。ここでバレれば楽になれる。密かに期待した。
「私は仲間を疑いたくない」
フロストがぎこちなく答える。
「そんなこと言って、自分がつるし上げられるかもと戦々恐々としてたりしてな~♪ 」
メゼツはバレても良いという気持ちだったので、かえって疑われずにすんだのかもしれない。
「バレてしまっては仕方ないわね」
フロストが立ち上がる。緑のマントを脱ぎ棄て、緑の制服が露わになる。
「3特の制服」
いち早くラビットが気づく。
「そう、魔法監察庁第3種摘発課・特定魔法取締監察官フロスト・クリスティーよ。はい動かないッ3特よ! あなた達を特定魔法の不正使用により連行しますッ」
クルトガはすでにフロストがどういう人物かつかんでいるらしく、落ち着いて自分のチーズタルトを差し出す。
「ここにもうひとつチーズタルトがあるんだが」
「不正使用の上に買収ですか。私の願いはただ一つ皆が正しく魔法を使うこと……チーズタルトください!! 」
フロストは嬉しそうにチーズタルトをほおばる
「でも今回だけですよ。タリスマンが砕け散るほどの強力な召喚魔法は軍縮条約違反ですから」
「どういうことだ? 」
メゼツの問いにクルトガが代わって答える。
「3特のタリスマンは魔法力を吸収する魔道具なんだ。イーノの召喚魔法はすべてタリスマンに吸収されていた」
和やかな雰囲気が一転する。メゼツがテーブルを蹴って立ち上がり、フロストを怒鳴りつける。
「同じエルフの仲間だろうが。なんで足を引っ張るマネをすんだ!!! 」
「私は自分の仕事をまっとうしただけです」
フロストは言い返したが、言葉には迷いがあった。
「ちっ、なんで俺が怒ってんだよ」
居心地が悪くなったメゼツは大交易所にテレポートした。
あいつらエルフが悪いんだ、そう自分に言い聞かせながらメゼツはアーミーキャンプの見取り図を作成する。この見取り図と報告書、緑色の宝玉を小包にして、父であり総司令官であるホロヴィズに送って判断を仰ぐつもりだ。
決心が鈍らぬうちに伝書鳩屋に持っていく。
「ハガキ(鳩)は1ガルダ。速達(鷹)は3ガルダ。小包(エピスモー)は7ガルダです」
ちづると名札に書かれている店番が丁寧に説明してくれた。
「よっ、大将。うちの方が安くて速いでー。6ガルダでえーよー」
商売敵のエルフの運送屋が営業をかけてくる。
「また、エルフかよ」
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┃>運送屋に頼む ┃→3章へすすめ
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