Neetel Inside ニートノベル
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 機甲兵たちが精霊樹の城を蹂躙し、エルフ兵たちは玉座の間まで押し込まれる形となった。兵たちの動揺にも、ミハイル4世は動じず、余裕の笑みを浮かべてすらいる。
「ここは精霊樹の中心ぞ。魔力は極限まで高められる。フロスト、魔法だ」
「強力な魔法は軍縮条約違反です」
 法を遵守したかった。とはいえ、女帝として君臨したミハイル4世の命令は絶対だ。
「あの砲火をみただろ。先に破ったのはあやつらだ。構うことはない」
 フロストは呪文を詠唱し、氷の精霊の力を手のひらに集め放った。
「フリーズ!! 」
 足が凍り付き床とくっつき、機甲兵たちの進軍が止まった。ラビットたちペンシルズの傭兵たちが動けない機甲兵に襲い掛かる。指揮していたゲル大佐は足が張り付いたまま、軍刀を抜き勇戦した。
「どいてろ、小娘。それは私の獲物だ」
「あなたは黒騎士」
 黒騎士はラビットを押しのけ、ゲルの前に立つ。
「動けない相手をボコるとか。ちょっとセコいんじゃね~の」
 二人の間に白くて丸い生物が割って入った。メゼツは黒騎士のうわさを知っていた。家伝の鎧の性能が優れているだけで、中身はたいしたことがないことを。鎧が本体とかダークピカチューとか陰口叩かれていることを。
 こいつになら勝てそうだと、メゼツはショートテレポートで黒騎士の頭に頭突きをお見舞いする。黒騎士の兜が吹き飛ばされた。
「え? 鎧が本体ってそういうことなの? 」
 黒騎士のあるべきところに首がなく、鎧の中は空っぽだった。
「見たな。楽に死ねると思うなよ」
 黒騎士は剣を抜くとお返しにメゼツの兜を飛ばし、あえて致命傷にならないようにいたぶり始めた。
「くそっ、ホントは強いなんてインチキだ」
 黒騎士が舐めプレイしている間に、どうにかしてテレポートで戦線離脱しようとメゼツは思った。しかし余りに実力差がありすぎて、そのスキは見つけられない。
 現在の拮抗した状況を打破すべく、エルフには珍しい赤い髪をなびかせた機械仕掛けの悪魔が投入された。
「お前は、俺が生け捕りにしたエルフ。久しぶりだな」
 メゼツのあいさつを無視し、赤髪のエルフは黒騎士に突進する。鉄の爪を剣に打ち合うが、人間離れした手数の多さで黒騎士を圧倒。たまらず黒騎士は腕力で押し切ろうとするが、これも通らず逆に壁際まで追い詰められた。鎧をも突き通す一撃で、糸の切れたマリオネットのように黒騎士は崩れ落ちる。
「間に合ったか。丙式乙女伊一〇七型華焔」
 ゲルの言葉を聞いて、ミハイル4世の顔が凍り付いた。
「敵の新兵器は完成していたのか」
 華焔は次のターゲットを求め、ミハイル4世の護衛のエルフ兵たちを一撃のもとに切り伏せていく。ラビットの前に華焔が近づく。
「お前、おかしいだろ。エルフが人間憎むのも、人間がエルフ憎むのもいいけどよ。エルフが同じエルフを殺すのか。おかしいだろ」
 ラビットをかばうように立つメゼツの言葉に華焔が混乱する。
「私は丙式乙女伊一〇七型華焔。断じてエルフなどではありません」
 ゲルが冷たく言う。
「余計な事を吹き込むなメゼツ、機械に心は必要ない」
 ミハイル4世は傍らの緑衣の巫女に命令した。
「敵が仲間割れしているうちに、禁断魔法の詠唱をするんだ。」
 強すぎる魔力を制御するため目を褐色の布で覆っているニフィル・ルル・ニフィーは、禁断魔法を使うことをためらっていた。
「禁断魔法は甲皇国兵を消し去ることができますが、引き換えにミシュガルド一帯の精霊樹は死滅するのです」
「甲皇国に奪われるくらいなら、精霊樹などいらぬ」
「しかし、禁断魔法は条約違反です」
 フロストはなおも法を守ろうとする。
「法など権力者の都合でどうとでもなる」
 ミハイル4世はフロストの今までの仕事を全否定した。フロストにとってとても受け入れられるものではない。
「そんな」
 フロストと同じく渋っているニフィルにミハイル4世は決断を迫る。
「何を迷うことがある。今やらねば、エルフは皆殺しにされるぞ。お前の肉親のように」
「よせ、ニフィル。知ってるか、今も爆心地の上空には犠牲者の魂が漂っているんだぜ。歩いたり、話したり、泣いたりしている。あんまり一瞬で蒸発したから、自分が死んでいることに気づいてないんだ」
「あのガキを黙らせろ! 」
 ミハイル4世の命令で、エルフ兵たちがメゼツに斬りかかる。ウンチダスの体では一般兵の一撃ですら脅威だ。しかしエルフ兵たちは血煙をまき散らして倒れた。
「サンリ君参上! エルフは虐殺だー!! 」
 サンリが来援し、乱戦はさらに収拾がつかなくなる。
「サンリ、ミハイル4世を殺せ。禁断魔法を使われる前に」
 ゲルの一言にサンリは狂喜して、突撃した。
「甲皇国万歳! 」
 すでに華焔によって護衛は逃げ散っている。ミハイル4世は泣き叫び助命を乞う。サンリは別に許す気は毛頭なかったが、悪い病気が出てしまった。彼は極度のロリコンだったのだ。ミハイル4世は実年齢とかけ離れた幼い容姿である。今サンリはロリババアはアリかナシかで悩んでいた。
「幼女はかわいい、かわいいは幼女、幼女はエルフ、エルフは憎い。畜生なんでエルフなんだよ。エルフだと……幼女だから許す! 」
「あいつはもうダメだ。メゼツ、ミハイル4世を殺せ。禁断魔法を止めろ!! 」
 ミハイル4世は高齢だ。今のメゼツでも蹴り殺すことは可能だろう。

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┃>ミハイル4世を殺す  ┃→最終章 世界を救う1つめの方法 へすすめ
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┃ ミハイル4世を殺さない┃→7章へすすめ
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