Neetel Inside ニートノベル
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 スズカのもとにも刺客が放たれた。
「あんた、民衆に性奴隷を恵んでくれる案を出したらしいじゃねえか」
「だったら、まずは自分の体でお手本を見せてくれよ」
 下卑た顔の二人組が近づく。
「貴様ら、どこの部隊だ。上官侮辱罪は銃殺だぞ」
 スズカは拳銃を抜いて、威嚇に一発撃った。二人組はひるまず、拳銃を持つ右腕をつかんだ。即座に射殺するべきだったと後悔したスズカは、銃口に指を詰められていたものの構わずに引き金を引いた。拳銃が暴発し、左手を吹き飛ばされた男がのたうち回る。
「憲兵は何やってる」
 スズカは大声で呼ぶが助けは誰も来ない。窓の外に憲兵の腕章をつけたツインテールの女性士官、ダスティ・クラムを見つける。ダスティは札束を数えるのに忙しく、聞く耳もたない。憲兵はすでに買収済みだ。スズカは自分が売られたことを悟った。
 相棒をカタワにされた男は、助けを呼ぶスズカに興奮して、ナイフを抜いた。スズカも軍刀を抜く。相手は右手のナイフを腰骨より前方に構える。スズカは両手で柄を握り、左腕をわずかに曲げて剣先で相手ののどをとらえる。相手が右足で踏み切り、スズカの肩にナイフを突き出す。スズカは左足を送り、右にさばく。相手は胸、腹と続いて突く。防戦一方のスズカの脳裏に、最後まで軍人になることに反対した父の顔がチラつく。
 下からすくい上げるように突かれたとき、相手の姿勢が崩れた。その隙をスズカは見逃さなかった。下腹に力を入れ、左足を大きく一歩踏み出すと同時に、左斜め上方から円弧を描くように斬り下ろした。相手は右胸から左膝まで切り裂かれ、絶命した。
 本来、白兵戦をすることがない将校に格闘技術は必要ない。しかしスズカは左目のやけど傷を戒めとして、戦闘訓練を欠かすことはなかった。このような形で活かされることにスズカは不本意だったが、味方から逃げるために大いに役立った。

       

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