Neetel Inside ニートノベル
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 一方そのころミシュガルドでは、皇帝の孫であるカデンツァが同じく皇孫のカールと話している。カデンツァは駐屯所司令部にあまり顔を出さないカールに会うために、わざわざ私邸に出向いていた。
「カール、お前は皇帝陛下の見舞いに行かないのか」
「お前こそ」
「私はクーデター未遂の前科がある。とうに世継ぎからは外されているさ」
「で、探りを入れに来たわけ」
 カールはそっけなく答える。カデンツァの意図が読めず、身構えているようだ。
「そうじゃない。私と組まないか。」
「お断りだ」
 即座に断られたカデンツァは赤い瞳に冷ややかな色を浮かべて、カールを批判する。
「なぜ乙家の下々とは付き合うのに私とは組めん。お前の母も乙家の謀略で殺されたじゃないか、我が父と同じように」
「謀略で不幸になるのは権力闘争に明け暮れる貴族のみ。戦争に比べれば、謀略のほうが1億倍ましだ」
「お前はホロヴィズに洗脳されたミゲルの前でも同じことが言えるのか」
 カールはカデンツァの言葉に耳を疑ったが、同時に納得もした。ホロヴィズならばそのくらいのことはやってのけるだろうと。
「ホロヴィズはミゲルに何をした」
「何だ、情報将校のくせに知らなかったのか。ホロヴィズはユリウスを皇帝にするため、催眠術師レイバンを使いミゲルの性格を真逆にしてしまったらしい」
 人間、聞きたくない情報は知らず知らず遮断してしまうものだ。カールは皇帝候補レースに関する情報にだけ極端に疎くなっていた。
「ミゲルの性格をもとに戻すことはできるのか」
「さすがのホロヴィズも皇族に手荒なまねはしまい。ただ暗示にかかっているだけだ」
「いつミゲルが権力を望んだ。なぜそっとしておいてあげられない」
 カールはカデンツァの提案に乗った。ホロヴィズにミゲル洗脳の疑いがあると共同署名でクノッヘンに直訴状を送ったのだ。後日ホロヴィズは失脚し、無事ミゲルの洗脳は解かれた。

       

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