Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 舞台は再び帝都マンシュタインにあるルントシュテット総合病院に戻る。
「父上の体で人体実験しようするなど言語道断。義兄上は皇帝にふさわしくない」
「お前が懐中時計なんぞ身につけさせたから事故が起きたんだ。お前こそふさわしくない」
「まあまあ、叔父様がた。ここはひとつ、間をとって僕が皇帝ということで」
 3人の後継者はいまだに口汚く争い続けていた。そのさなかクノッヘンの病状は進行し、もはや誰の声も届かない。老皇帝は静かに目をつむる。ついに耳も聞こえなくなった。音が遠ざかり、まるで浮世との縁が切れていくように感じられる。
「わしももう長くはない……そうだこれでいい、これでやっと一人だ……」
 いまわの際の枕元にいつのまにか人の気配がある。死神が迎えに来たのかと思い目を開けると伝令が立っていた。伝令は何事かしゃべっているが聞き取れない。死の瞬間まで公務をしなければいけないのかとクノッヘンはうんざりしたが、伝令が差し出した直訴状を見て最期の行動に出た。
「馬鹿息子共が……」
 クノッヘンは遺言を記し、崩御した。世継ぎはカールにすると。


 10章へすすめ

       

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