Neetel Inside ニートノベル
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 ミハイル4世は生き残りのエルフを集め、丘陵地帯の枯れ井戸へと続く抜け道を急いでいた。一番前を歩いていた黒騎士が幸の薄そうな甲皇国の女性士官を捕まえて、ミカエル4世の前に連れてくる。
「尋問しましたが、スズカ・バーンブリッツ大尉という名前以外は吐きません」
「こんな奴にかまってる場合か」
「いざとなれば盾ぐらいにはなりましょう」
 黒騎士の提案でスズカは人質として枯れ井戸の中まで連行された。横穴から出ると真上から落ちる光の円が、スポットライトのようにミカエル4世を照らし出す。
 枯れ井戸の横穴を魔法で崩して埋め、アルフヘイム軍はようやく一息ついた。これで追撃を振り切ることができそうだ。エルフたちはスズカが降りるときに使った縄をよじ登って外に出た。外の新鮮な空気を吸おうとしたが、ススやほこりで空気は濁っている。
 アーミーキャンプのあった場所を中心に森がくり抜かれ、巨大なクレーターが出来ている。一瞬で廃墟となってしまったアーミーキャンプを遠く眺めながら、また自分たちはとんでもないことをしでかしてしまったんだとエルフの誰もが思った。
 スズカも枯れ井戸をよじ登ろうと縄にしがみつくと、エルフ兵は縄を切ってしまった。縄といっしょにスズカは落ちる。大した高さじゃなかったので無傷だったが、捕虜虐待じゃないかと抗議した。
「ちょっと、私まだ登ってない」
「貴様ら甲皇国が我らアルフヘイムにしたことを考えれば、本来なら八つ裂きにしていたところだ。枯れ井戸の中で餓死で済んで良かったと感謝しろ」
 甲皇国の勢力圏内に長居したくないミカエル4世は、スズカを枯れ井戸の中に置き去りにしたまま南に去っていった。

       

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