郊外にひっそりと建つトクサ邸の門前で
モニター画面が敷き詰められた異様な部屋で、神官風の格好をした緑の髪の男を前に
軍属であるのに軍服を着ていないのは、特殊技能を持った幹部の特徴である。トクサの特殊技能は読心術だった。声の調子から心を読むだとか、顔色から心を推し量るだとか、そんなチャチなものではない。トクサの正体は丙家監視部隊の
しかしゲル大佐も疑り深い人だ。トクサはヤーヒムが亡命し、初めてクノッヘン皇帝の前に謁見した日のことを思い出した。トクサが心を読み、ヤーヒムの裏切りに虚偽なしと証言した日。それでもゲルは軍への入隊を反対した。するとヤーヒムは皇帝の前に一歩進み出ると、両の耳を自ら削ぎ落したのだ。エルフの誇りをいとも簡単に。
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