Neetel Inside ニートノベル
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 別動隊は途中、甲皇国の後方拠点を押し通り、さらに敵中深く入り込む。脱落した魔力タンクを途中で遺棄し、戦車の乗員もすべて馬上の人となっていた。乗りつぶしては馬を代え、人も馬もそろそろ限界が近い。逃避行でへとへとの別動隊の中で、ただひとり黒騎士だけが大気炎を吐いている。
「小が大を包囲できるわけがない。私にも無理だし、さしものクラウス・サンティ本人ですら不可能だろう。しかし、奴らの頭の中に住んでいるクラウスは違う。甲皇国人どもは自分たちの作り出した妄想に負けたのだ。どうだこの戦術」
(戦術というよりかは、心理学の領分だ)
 またその話かとフェアはうんざりした。コラウドのように無用のことをしゃべらなければ、まだ格好もつくだろうに。
「俺たちヒザーニヤ4兄弟の父親、ジョゼロ・ヒザーニヤは行方不明なんだぜ。古代ミシュガルド文明の伝説上の国、神の千年樹帝国を探すと言って出て行ったきりだ」
 一族総出で参戦したハイランド騎士のジョッツ・ヒザーニヤも競って自慢話を始めた。思いのほか黒騎士が食いついている。それを横目にキルクはけげんな面持ち。
 ミカエル4世は亜人歩兵部隊を直接指揮し、黒騎士のお目付け役としてキルクを別動隊に編入していた。
 騎兵たちの中で最も異彩を放っているのが、大人の身長ほどの2足歩行する竜にまたがるガザミである。ガザミはプレーリードラゴンに乗るのは苦手だった。ならばなぜ乗るのかといえば、プレーリードラゴンのほうが乗ってくれとせがむのである。戦時中手傷を負わせた敵軍のプレーリードラゴンを哀れに思い、治療したところ息を吹き返し妙に懐かれてしまったらしい。
 プレーリードラゴンは鼻をひくつかせて、急にスピードを上げた。
「ガザミ、前に出すぎだ」
「あたしじゃなくてこの子が勝手に」

       

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