Neetel Inside ニートノベル
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ミシュガルドを救う22の方法
9章 妖の里

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 白い髪の女の子がメゼツの手を引いて連れてきたのは学校だった。校舎はなく、生徒たちは草っ原に体育座りをしている。木にかかっている黒板でかろうじてここが学校であることが分かった。黒髪の上に猫耳を生やした少年が筆記用具を取り出し、準備している。
「遊ぶんじゃなかったのかよ。ガキじゃあるまいし。何で、また学校に」
「うちの探検部は部員が少ないから勧誘するんだよ」
「探検部?」
「はじめまして。私は探検部部長のユイ・グロットーだよ」
 黒髪の少年がユイに続く。
「副部長のルドルフ・サドラー。といっても探検部はまだ2人しかいなんだけどさ」
「俺はメゼじゃなかった、イーノ。こいつらはシャルロットとルーだ」
 メゼツは自分がエルフの幼女になっていることを思い出す。
 シャルロットは「この私に教えを説こうとは、笑止」とか言うのかと思ったが、意外にも素直に座っている。かといって大人しく勉強するメゼツではない。授業が始まる前に逃げようと後ずさる。
「ダメ。私たちはフリオ君たちとは違う。 探検もするし、勉強もしなきゃ」
 どうやらライバルグループと張り合っているようだ。
「勉強なんて、なんの役に立つんだよ」
 子供以上に子供らしいことを言うメゼツの後ろに、青空教室のただひとりの教員ロンド・ロンドが立っている。
「やれやれ……こんな事聞いたら、先生泣いちゃうよ。 いや、泣いてちゃだめだ。勉強嫌い。それこそ、教えがいがある」
「はっ!?」
 メゼツは咎められたイタズラ小僧のように居直りながら振り返る。
「考えてください。君は何になりたい? 教えてください。君の夢を」
(俺はいったいどうなりたいんだ?)
 自問自答してみたが即答することができなかった。任務から解放されててみれば、メゼツにはやることはない。いや、生前だって自分の意志で目標を持つことはなかった気がする。ただ漫然と強くなりたいと思っていた。何のために?
「そんなに難しく考えなくてダイジョーブだよ。ロンド先生は生徒の目標に合わせた授業のために聞いてるだけだから。僕はイナオだよ。よろしくね」
 前の方に座っていた淡い緑色の髪の少年が煩悶するメゼツを気遣う。メゼツは観念してイナオの隣の切り株に腰を下ろした。

       

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