Neetel Inside ニートノベル
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 ペピタは歩きながら帰りたいおじさんの怪談をした。霧が重く立ちこめ、雰囲気をいやがおうにも盛り上げる。もはや百物語。なかなか探検の雰囲気にならない。
「ビビってんじゃねーよ」
「ビビってないですって」
 そうけだつルドルフをメゼツがまたからかう。
 メゼツも幽霊みたいなものだ。今だってイーノの体に乗り移っている。このまま体を借りていていいのだろうかとも思う。イーノの手から、霊体の手をすぅっと引き抜く。メゼツは霊体の手をじっと見る。きらきらと青く透き通った手を。
(俺はいったいどうしたいんだ?)
 エルフの幼子の体を借りてまで、生に執着する意味はあるのだろうか。
 ぼおっとしていたメゼツの両手が前を歩くユイとルドルフに触れる。
「きゃっ、誰かがお尻触った」
「ひゃあっ!?……しっぽは……握らないでえっ……」」
 ルドルフが背をのけぞらせる。
「でたああああ!---------!!!」
 ヒュームスが出たと探検部は大パニック。2メートル先も見通せない霧が拍車をかける。ユイとルドルフが深い森へと消えていく。探検部の子供たちは怖さを振り切るように走った。
「ちょちょちょ! ちょっと待って!」
 ペピタとイナオも同じ方向に逃げていく。ペピタを追ってペピトが、イナオを追ってアマリが森の奥に分け入っていく。
「おい、待てって。危ないぞ」
 霧はまるで冬の日の吐息のように、現れては消え、消えては現れる。
メゼツも森の中に飲み込まれていく。その後ろから追っていたシャルロットの目の前で、メゼツの背中は突如として霧散する。
 取り残されたシャルロットは呆然と立ち尽くした。
「うそ。消えちゃった」

       

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