レンガ造りの城壁のてっぺんにはぎざぎざの胸壁があり、そのぎざぎざと噛みあうような歯車の付いたモノレールが胸壁をレールに使い、ぐるりと街を一回りしている。
奇怪な生物の皮を着ている肥えた男が、街の周囲からひたひたと迫る津波のようなローパーの群れをモノレールの窓から観察している。
同乗するちみっこい男の子が声を荒げる。赤い民族衣装と手にしている水晶玉が特徴的だ。身長と同じ長さの紫色した長髪は首の下でひとつに編まれている。
「これが大海嘯まる。とうとう占い通りのことが起きたまる。さんざん警告したのになんで救世主を探し出さなかったまる? デイブ・ピザガスキー市長!」
「お客人。このグロースムントの血肉でできた白い皮衣を見よ、これこそ救世主のあかし。私がこの街を守る!」
「その者、血で染めし白き衣をまといて、金色の森に降り立つべし。あなたは白き衣の者ではないまる」
「ふん。この街の防衛設備を見せてやる」
デーブ市長は同乗している股肱の部下に城壁に備え付けられた大砲を撃つように命じた。
ローパーの群れに砲弾の雨が降り注ぐ。跡形もなくはじけ飛び、大地は耕される。
「なんてどんくさい奴らだ、これなら目をつぶったって当たる」
ローパーの体表色がオレンジと白のしま模様に変わり、腰がくびれ、触手を蠢かせて機敏に動き始めた。
砲弾にもひるまず赤い波が勢いを増し押し寄せる。堀はローパーの死骸ですぐに埋め尽くされ、積み重なって堀を渡り切ったローパーが城壁に体当たりする。学習でもしているのか