Neetel Inside ニートノベル
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ミシュガルドを救う22の方法
13章 ビキニの死神

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 発見以後ミシュガルド大陸は日々発展し続けているが、情熱ばかりが先走りして人も物資も流通も追いつかない状況だ。
 それは手広く商売にいそしむ商業国家SHWですら、重要な商談にもかかわらずクエスト登録所の2階会議室を仮の応接間として使わなければならないほどに。
 よく磨かれたクリスタルのテーブルの上で名刺が交換される。クラーケン新聞編集長パガンダ・プロ。SHW貿易部門社長デスク・ワーク。よく見知った相手だが、名刺交換は儀式のようなものだ。ターバンを巻いた身なりの良い商人は糸のように細い目でパガンダの名刺と顔を見比べている。
 中性的ですらある整った顔に線の細い体。青い髪に隠れているが、顔の右半分に及ぶ生皮がはがれている。何が気に入らなかったのか、自傷によるものらしい。亜人の考えることはよく分からない。そういやパガンダはタコの亜人だったか。タコは腹が減ると自分の足を食うというものな。
 デスクは張り付いた笑顔に侮蔑の色をにじませた。
「クラーケン新聞に載せたアルフヘイム政府によるミシュガルド入植の広告は上手くいってますか」
「ダメ、ダメ。棄民政策と非難轟轟ですよ」
 突如クエスト登録所に賑やかな声が響く。
「いやー、マジ楽勝だったな」とメゼツの声。
「エリーザのおっぱい往復ビンタで混乱させ、後は手数で押し切れましたね」
「やはりうんちのアドバイス通り、新たにを仲間に加えて正解だったな」
メゼツはセレブハートとの約束で裏クエストを終えたところだった。自分の本来の体を取り戻さなかったメゼツは、仲間に頼ることが多くなり、うんちの助言もよく聞くようになった。
 その声は2階まで届き、商談を妨害する。
「さらに追加で融資いたします」
「ふふっ……期待してますよ」
 デスクは急ぎ商談を取りまとめ、いったん中座すると秘書のエア・チェアーを呼びつけた。
「下の品性下劣な声はいったい何の騒ぎだ」
「なんでも、ヴォルガーの暗殺クエストを達成されたお客様がいらしたそうですよ」
「バカな。あの甲皇国ですら手を焼いているヴォルガーを……何かの間違いじゃないのか」
「クエスト登録所職員が遺体を検分しています。ヴォルガー本人という結果でした。」
「2000万VIPの賞金首だぞ。あんな小汚い奴らにやるのか? くそっ、エア、お前行って言いがかりをつけてこい。ヴォルガーを倒すほどの強さを証明してみせろとな」
「そんな。仲間の中にビキニ拳法の使い手エリーザ・ブラックビキニがいましたから強さは折り紙付きですよ」
 デスクはエアの貧相な体を品定めするようにじろりと見ながら言う。
「そういえば君もビキニ拳法の使い手だったな。そうだ、こうしよう。強さを証明するために君とエリーザとやらが勝負するんだ。どうせなら観客を取って一儲けだ」
「な、な、な。無理ですよー。相手はあのビキニの死神ですよ。私なんかじゃとても」
 エアは自分の胸元に目を落とした」
「口答えするな、戦わなきゃ減給だ」
「そんなー」

       

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