Neetel Inside ニートノベル
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 ステージの上でまばゆいばかりの光を浴びて、きらびやかな衣装を着た少女達が歌って踊る。7人が跳ねて、翔ぶたびに、キラキラと光るものが彼女たちの身体から溢れ落ちてくる。壇下には彼女たちに相対する形で、もの凄い量の人間が会場を埋め尽し、大歓声を上げている。会場の熱気は最高潮に達し、何も知らない人であってもその熱さに飲み込まれそうになるほどの様相を呈していた。
 曲が間奏に入り、アイドルのリーダーとおぼしき中央の少女にスポットが当たる。
「皆さん、今日も来てくれて、今日まで応援してくれて、本当にありがとう! 皆さんのお蔭で、今日の儀式は大成功です!」
 一瞬の歓声。しかし直後、聞き慣れない言葉に次第に静まり返るオタクたち。儀式ってなんだ? その疑問に答えるかのように少女が続けた。
「実は今日のライブでは、皆さんたちの精神エネルギィを生贄に、悪魔転生の儀式を行ってました。黙っていてすいません。私たちは今日でアイドルを卒業し、人類を滅ぼす悪魔になります!」
 突如会場の明かりが全て消え、辺りは真っ暗になる。混乱の中、少女たちの身体が仄かに光る。牛のように曲がった2本の角、コウモリのように膜の張った羽根、光彩の薄い黒い眼球、青く透き通った肌、そして黒くつややかに光る尻尾……その容姿は人ならざるものに変わっていった。

 静まり帰った会場で、リーダーが口を開いた。
「ふう、人間のフリをしてキモいオタクどもに媚を売るのもこれで終わりね」
「ねえ早く掃除しちゃいましょう? こんな下等生物と触れ合っていたかと思うと、今でも虫酸が走るわ」
「そうね、景気づけにここにいる豚どもを八つ裂きに……やだ、ちょっと、何、これ……?」
 一人の悪魔が話を止め、何かを恐れるかのように腕をぎゅっと抱く。と同時に悪魔たちが揃って騷ぎ始めた。
「いや、何か入ってくる……ウソでしょ、こんな気持ち悪いもの……!」
「儀式で吸収した魔力が暴走してる! こんなに強い精神エネルギィが……制御出来ないっ」
「イヤ、止めて! 私が、私の人格が、私の性格が……あの下等生物の好みの通りに変えられていくっ!!」
 悪魔となったはずのアイドルたちが次々と悲鳴を上げて倒れていく。次に彼女たちが目を覚ました時、彼女たちは既に悪魔ではなくなっているだろう。彼女たちはオタクたちの欲望を忠実に叶える為の存在となって、命果てるまでオタクに尽すことになるのだ。

       

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