Neetel Inside ニートノベル
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 学校から帰ってくると、親父が新しいテレビの梱包を解いていた。
「あれ? テレビ壊れたの?」
 確か昨日のポケモンはちゃんと映ってたと思うけど。
「あいや、これは小遣いで買ったんだ。いいの出てたし、母さんに怒られたしな。部屋で一人で見る用だ」
 なるほど、親父の野球キチは傍から見てても異常だったしな。ちなみにカイアンツが勝った日は俺は部屋から出ないことにしている。居間のテレビが親父によって占領され、全てのスポーツニュースを一緒に見物する羽目になるからだ。
「なるほど。けどそれ、なんだかゴツくない?」
「新機能付きの新商品らしい。なんでも野球に特化した特別機能なんだと」
「ふーん……?」
 ハイテクな新機能がつくのにデカさは関係ないんじゃないかと思ったが、今ここで親父の気が変わると、今日のドラマが見られない可能性が高い、それは困る。細かいツッコミは入れないことにしてその場を離れた。

 ここのところ、親父の機嫌が異様にいい。いや機嫌がいいこと自体はいいことなんだが、ここ最近のカイアンツは連敗に次ぐ連敗でBクラス落ちを確定させたところなのだ。
 それでも、何か他に理由があるのだろうと静観していたのだが、今日になって親父が死にそうな顔で帰ってきた。
「CSが……やってない……」
「いや、やってないってことはないでしょう。ちゃんと珍宮でタイガンスvsスパローズが……」
「カイアンツがっ! カイアンツが……ペナントでぶっちぎりだったのに……」
 親父は俺の言葉を聞いていない。ていうか、目の焦点が合ってなかった。
「落ち着け親父。カイアンツは今年BクラスだからCSに進出してないよ」
「違う! それは間違ってる! 俺は見たんだ……最高の……最高のペナントが……テレビでやってたんだ……ずっと見てたんだ!」
 親父の目は宙を泳ぎ、意味不明な言葉を口走っている。あれだ。親父がおかしくなったのはアレが原因に違いない。
「壊すしかない……」
 反射的に俺はトンカチを持って親父の部屋に侵入した。果たしてテレビの電源は点いており、CS2ndステージ第一戦でカイアンツが勝利したことを伝えていた。
「ええい、親父を解放しろ!」
 俺がトンカチを振り下ろすと、ポシュ、と変な音を立ててテレビは消えた。が、音は止まない。壊れた隙間から、中で何か蠢いているのが見えた。
 そこにはカイアンツのユニフォームを着た沢山の小人がいた。

       

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