Neetel Inside ニートノベル
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 もうダメだ。前職をやめてもうすぐ半年。不況の中未だ仕事は見つからず、もうすぐ貯金は底をつく。失業保険はとうの昔に切れた。父親が定年なので仕送りも見込めず。アルバイトも応募したが、前職で身体を壊したと言ったらことごとく落とされた。
 つまり、もう詰んだ。こうなれば可及的速やかに死に至るしかない。死こそが人生の最適解。自殺・to・winである。
しかし自殺の仕方が問題だ。首吊りでは吊った場所に迷惑がかかる。発見が遅れると腐るし。公園とか公共の場だと発見も早いが、早すぎて死ねない可能性もある。飛び降りや電車止めるのも同じ理由で却下。迷惑をかける人が多すぎる。そういうのがいいという人もいるだろうが、俺はなるべく人には迷惑をかけずに死にたい。
 自殺サークルについて調べてみたが、活発に交流が行われているような場所はなかった。もちろんないわけではなかったが、そういうところは「死ぬ方法」について語る場ではなくて、「死にたい気持ち」について語る場であることがほとんどだった。とはいえ、もし本当に参加出来そうな集団自殺案件があったとして、参加したかどうかは分からないが。
 睡眠薬のオーバードーズは上手くいかないらしい。十数年前から睡眠薬の成分が変わって使えなくなったんだとか。毒物・劇薬は入手出来るかどうかが問題だ。それに部屋の中で飲むんじゃ首吊りと変わらないし、衆人環視の場で大量に劇薬を飲むのは難しそうだ。
 要するに、衆人環視の中、死にそうだと思われないような方法で死ねればいいわけだ。そういうわけで、俺は地元のショッピングモールにあるフードコートに向かった。
 休日なだけあって、ショッピングモールの中は家族連れで一杯だ。ここなら倒れたらすぐ救急車が呼ばれるだろう。俺はバッグから大量のこんにゃくゼリーと切り餅を取り出した。おもむろに口に詰め、咀嚼もそこそこに飲み込みまくる。さあ、俺はいつでも逝けるぞ。早く来い。そう念じながら次々に餅とゼリーを頬張る。
「ママー、変な人がいるよ?」
「しっ、見ちゃいけません」
 親子の声が聞こえる。おいおい駄目だよ、ちょっとは見てくれなくちゃ。俺が死ぬ瞬間をな。
 そんなことを考えながら、俺はあっという間に最後の晩餐を食べつくしていた。ふう、食った食った。腹一杯になったらなんか気分が良くなってきた。明日からまた職探し頑張ろう。
 俺は悠々と家へ帰っていった。

       

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