「どうしたんだよムネオ、そんなにニヤニヤして」
「ふっふっふ。じゃーん!」
「うおっ! こないだ出たばっかりの最新式のナカシマ・モデルじゃん!」
「すごーい! いいなーカッコいいなー」
「へへへ、パパがメーカーの偉い人と知り合いで貰ったんだ。いいでしょ」
「じゃあ今日はこれで遊ぶので決まりだな」
「あ、ちょっと! 触らないでよ!」
「うるせえ! お前のものは俺のもの、なら俺がどうしようと俺の勝手だろ! それ!」
「ああっ! 乱暴に扱わないでよ、壊れちゃう!」
「ここをこうして……あれ? おかしいな?」
「やめて! 落ちちゃう!」
「コラーっ! またお前らか?」
「まずい、あの親父に叱られるのは勘弁だ! 俺帰ろーっと!」
「ちょっと! ずるいよライアン! 僕も逃げよう! 飛太、代わりに取り戻しとけよ!」
「ええーっ! また怒られるのは僕の役目なの!? もうやだよお」
「なんだお前だけか! こんなものうちの方へ飛ばしてきて、どういうつもりだ!」
「ごっ、ごめんなさい! わざとじゃないんです、ゆるしてください!」
「悪いと思っているならワシがここに来る前に自分で謝りにくるものだ! 謝って済む問題じゃないが、謝罪がなければ話も進まん」
「本当にすいませんでした! と、友達が遊んでいて……」
「この後に及んで人のせいか! 全くいい歳して困ったもんだ……まあいい。後で親御さんと直接交渉するから」
「そ、そんな……親だけは勘弁してください!」
「そんなことを言える立場と思っているのか? 全く、どうして大の大人ばかり怒らんといかんのか……怒っとるこっちが情けなくなってくるわ。見ろ! あっちの子たちはちゃんと大人しくドローンで遊んでおるじゃあないか。ああはなれんのか?」
「でも、僕らにとっては遊びといえばボール遊びなんです……」
「バカ、遊んでおらんとさっさと働け! 親御さんも心配しておったぞ」
ドローンが子供のおもちゃとして普及した近未来。ボールはテクノロジーに置いていかれた大人たちのノスタルジー回帰の為の道具となっていた。