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 人間の三大生理的欲求にも数えられ、生きていく上で必須と言われている睡眠。その睡眠の質を上げる道具を買い求めたり、快適に眠る方法を教えるセミナーなどに参加する「睡眠活動」が話題だ。「婚活」「終活」など様々な活動が活発化する中、睡眠業界に何が起きているのか。取材班が迫った。

「では、こちらの機械を使って実際に『質の良い睡眠』を経験してみましょう」
 都内某所、会議室の真ん中に大きなカプセル型の機械がズラリと並ぶ。「眠活」に関する情報提供を行っている団体の合同セミナーの会場だ。参加者を『睡眠補助サプリメント』を渡されると一人ずつカプセルの中に入り、10分ずつ体験睡眠を行う。『睡眠カプセル』は都内のリラクゼーションサロンなどで利用可能だという。
「睡眠に関する最新の技術と情報を真っ先に提供することを心掛けている」とセミナー担当者は語る。「参加者からも『眠りが深くなった』『昼間の眠気が改善した』と喜びの声をいただいている」。過去のセミナー資料を見ると、当初は自社で開発していた枕や蒲団、アイマスクやヒーリングBGMなどを併設販売していたようだ。こうした製品の製造を中止し『サプリ』を紹介するようになったのが3年前、『カプセル』は1年前。開発したメーカーはいずれもベンチャーで、取締役に団体代表の一人が名前を連ねる。リラクゼーションサロンも同じだ。こうした関係を問われると「最先端の睡眠技術には会社として投資することもある」と言葉を濁した。

 こうした現状を憂慮する声もある。先がけて睡眠の研究を行ってきた医学界だ。睡眠障害を専門とするトコシマ・ヤスオ医師は「民間療法レベルの情報共有ならともかく、サプリメントや器具の内容次第では医師法や薬事法違反となる可能性もある。参加する場合には専門の医師の監修があるかどうか確認して欲しい」と警鐘を鳴らす。
 「眠活」のやり過ぎも問題だ。ある40代の女性は「眠活」のセミナーに通い始めてから、一日の睡眠時間が増え続け、一時は日常生活が困難なほどになってしまったという。医師からは過眠症と診断され、「眠活」をやめるよう助言を受けた。
「眠ること自体はとても心地良かったです。けれど、それが心地良すぎて、依存症のようになっていました」
 「質の良い眠り」を求めた結果が睡眠障害ではやるせない。春の眠りに限らず、睡魔には常に警戒しなければならない。

       

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