Neetel Inside ニートノベル
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 昔々ある国に、大層腕白でわがままなお姫様がおりました。娘のやんちゃぶりに手を焼いた王様は、神殿を通じて神に神託を求めました。神託は『娘を箱にしまいなさい。その箱は、誰にも開けられぬものでなければならない』と答えました。
 王様は、早速おふれを出しました。
「誰にも開けられぬ箱、誰にも開けられぬ鍵を持つ者がいれば申し出ること。鍵を献上した者には、好きな褒美を取らす」

 数日後、果たして一人の男が名乗り出ました。手に子供が一人入るぐらいの金属で出来た頑丈そうな箱を抱えています。
「それが言っていた品か。本当に誰にも開けられぬ鍵がついているのであろうな」
「勿論でございます。一度施錠してしまえば、たとえ稀代の大泥棒であろうと天下の鍵屋であろうと開けられますまい」
 それを聞いた王様は大層喜び、早速お姫様を無理やり箱の中に入れ、外から鍵をかけて閉じ込めてしまいました。

「王様、約束のものをまだ頂いておりませんが」
「おお、そうであったな。何を所望する」
「ではそこに閉じ込められたお姫様をいただきましょうかね」
 男の言葉に王様は飛び上がりました。
「何を言うか。それだけは出来ぬ」
「いいのですか? その箱の鍵は私しか知らない秘密の場所に隠してあります。このままでは姫は餓死してしまうでしょう」
 王様は迂闊に男を信用したことを後悔しましたが後の祭りです。しかし娘を見殺しにするわけにもいきません。
「やむを得ん。娘の命には変えられぬ」
 ところが王様がそう言ったかと思うと、箱は一人でに開き、中からお姫様が飛び出してくるではありませんか。王様も男もびっくり仰天。
「これはどうしたことだ」
「簡単なことですお父様。箱は外からは頑丈な鍵がかかっていましたが、中からは簡単に開けられたのです」
「ではこたびの神託は失敗でありましたか」
 大臣がそう呟くと、お姫様は首を振りました。
「いいえ、確かにこれは『誰にも開けられぬ箱』ではありませんでした。しかし今、私は本当の『誰にも開けられぬ箱』にしまい込まれています」
 王様はお姫様をひしと抱き締めると言いました。
「儂が間違っていた。子供の躾は、人や物の助けを借りればそれで終わるものではない。『愛の箱』で子供をしまいこんでやれば、子は自然と育つのだ……」
 それからというもの、お姫様は王様からの愛の鞭を受けて、健やかに幸せに暮らしましたとさ。おしまい。

       

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