Neetel Inside ニートノベル
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 その日、少し寝坊したジョンが急いで職場にいくと、中央の机周辺に人だかりが出来ていた。囲まれていてよく見えないが、中には何か大きな荷物があるように見えた。
「おはようございます。何かあったんですか」
「新型の子が今朝がた届いたの。凄い性能いいんだって」
「へえ、そりゃ凄い。じゃあ僕らはお払い箱ですか」
 冗談混じりにそう言うと、彼女は真面目な顔をしてジョンを見た。
「そうならないように、貴方に頑張ってもらわないとね」
「はいはい。今日もお互い頑張りましょう」
 その言葉が自分一人にかかるものだとは、その時のジョンは考えもしなかった。

 数時間後、ジョンは衆人環視の中で一人、プレイルームの中に立っていた。いや正確には一人ではない。一人と一体だ。彼は横にいる新型子守用ホムンクルス、CP-P221を眺めた。ホムンクルスは視線を下に落としてじっとしている。余裕の現れなのか、それとも緊張しているのか。人造生物でも緊張とかするのだろうか、とジョンはぼんやり考えた。
「ルールはそんな感じだ。ホムンクルスが勝てば、性能が実用段階ということで、開発側には量産に入ってもらう。ジョンが勝てば開発に差し戻しだ。頼むぞ、ジョン」
「えーとつまり、僕が負けたら、この子たちが僕らの代わりに子供の面倒を見ることになるんですね?」
「そうなるな。分かってると思うが、お前が選ばれたのは職員全員の推薦だ。手抜きはせず、全力で努めるように」
 出来るわけないだろう、とジョンは心の中で呟いた。自分が負ければここの人たちは全員失職するのだから。
「それじゃあ子供を入れるぞ。準備はいいな?」

 CP-P221の能力は凄まじかった。心と声を持たぬ人造生物とは思えないほどに丁寧かつ迅速な動き。当初その性能に半信半疑だった職員たちは、その手際の良さと子供たちへの好かれっぷりに度肝を抜かれた。これに勝てる人間などいないだろう、そう零す者さえいた。
 ジョンはそれの上を行った。彼は同時に複数人を相手することでホムンクルスとの速度競争に勝利した。その目もくらまんばかりの技術は、人をして「手が100本あった」と言わしめた。
 勝利ののち、疲労困憊となって仰向けに倒れているジョンの元に主任がやってきた。
「お疲れのところ悪いんだが、開発チームが来週また実験体を持ち込むと言っているから、また宜しく頼むよ」

       

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