「無人島に1つだけ何か持っていけるとしたら何を持っていく?」
「え、何? 何の話?」
「真理テストだよ。最近クラスで流行ってるの。お兄ちゃんは聞いたことない?」
「へえ、そうなの。知らなかった」
「良かった。ねえねえ、じゃあ答えて」
「んーそうだなあ」
僕はミカの顔を見た。心理テストは正直あまり好きじゃない。
小考ののち、変な答えをして妹をからかってやることにした。質問の内容からして、答えは恐らく『貴方にとって一番大事なもの』とか『貴方の重視する考え方を象徴するもの』とかそういう感じだろう。つまりこう答えてやればよい。
「ミカちゃんかな」
「え、私? じゃあ答え言うね。ええっと……」
ミカは予想外の答えに少々面喰らいつつも答えのページを参照している。その目と手の動きが突然止まったかと思うと、あからさまに顔が赤くなるのが分かった。しめしめ、どうやら作戦は成功だぞ。
「どうしたんだ? 具合でも悪いのか? 顔が赤いぞ?」
調子に乗ってそう言いながら近付いてみる。
「だ、駄目! 触らないで!」
「なんだ、照れてるのか? 兄妹だし今さらだろ」
「そ、そうじゃなくて!」
慌てふためくミカ。僕の動きに合わせて後ずさるが、すぐに壁に追いつめられてしまう。額に手のひらを乗せると、ビクリと身体を震わせた。
「少し熱があるみたいだな。風邪か? お兄ちゃんが部屋まで連れて……ん?」
そこまで言った辺りで僕はおかしなことに気付いた。何故かどこかの浜辺の砂浜の上に立っているのだ。
「あー、だから触っちゃダメって言ったのに……」
ミカの声に俺は我に返った。
「何これ? 何が起きてるの?」
「真理テストだから、答えた内容が真実になっちゃうんだって……お兄ちゃんはミカを連れていきたいから、ミカに触っちゃうと一緒に無人島に飛ばされちゃうって……」
ミカは瞳に涙を滲ませていた。
「ちょっと待って? 何その条件? 飛ばされるって何?」
「私今日ミンキーモモ見たかったのにー! お兄ちゃんのバカー!」
「アニメどころの騷ぎじゃないだろ! え、ちょ、待ってこれマジでなんなの? 帰れるの? 説明しろミカ!」
結局、僕らはたっぷり1時間ほどこの阿鼻叫喚の地獄の中にいた。もう二度と真理テストはごめんだ。