Neetel Inside ニートノベル
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「じゃあ次は何して遊ぶ?」
「缶蹴りしようぜ!」
「高おに!」
「えーもう走るの疲れたー」
 こういう時に決めるのはガキ大将の特権だ。
「じゃあドッジボールな」
 彼がそう言うと、女子からはブーイングが出た。
「うち痛いのいややわー」
「そうや! 男子の投げるボール力入れすぎ!」
「はあ? お前らが取れんのが悪いんやろ!」
 今にも掴み合いの殴り合いが起こりそうな緊迫した空気が漂う。彼は女子を一喝しようとしたが、その時一人の女子の心配そうな表情が目に止まった。数瞬の間、彼は方針を変更した。
「分かった! 花一匁や。花一匁やんぞ」
 途端に男子から落胆とブーイングの声が上がった。
「黙れ! ドッジやるにはチーム分けがいるやろ。そのチーム分けを花一匁でする。文句あるか」
 大将がゴネる男子を追っ払っていると、彼の元に一人の少女が寄ってきた。先ほどの心配そうな顔の少女だ。
「ありがとうね」
「お、おう」
「私避けるの苦手だから」
「べつにお前の為じゃ……」
「あ、池くん!」
 彼が言い終わるよりも早く少女は公園の入口へと駆けていった。遅れてやってきた優男が手を振ってそれに答える。爽やかな笑顔が眩しく感じた。

「それにしてもさー」
 花一匁のために2組に分かれながら、男子の一人がつぶやいた。
「なんで大阪じゃんけんって言うんだろ?」
「さあ?」
「大阪では負けと勝ちが逆なんじゃない?」
 この地方では花一匁の時には『大阪じゃんけん』を使う。やり方は普通のじゃんけんと一緒だが、勝敗は逆だ。パーがチョキに、グーがパーに、チョキがグーに勝つ。なんでそうなるのか、どうしてそうするのか誰も知らないし、大阪に行ったことがある奴もいない。
「ってことは大阪行ったら女子の方がドッチ強くなる?」
「それだけじゃねえぞ。大将とか喧嘩で最弱だ」
「外遊びもゲームも最弱になっちゃわん?」
「大将が勝てないものないもんな」
「じゃあ大阪行ったら大将はもう大将じゃねえな!」
 ギャハハハ、と下品な笑い声が響く。大将は何か言おうとしたが、上手く言葉に出来なかった。
「ほら、無駄口すんな、早くチーム決めしてドッジすんぞ!」
 男子をけしかけると、彼は向かい合わせになった相手チームを見据えた。彼女の手は、しっかりと優男の手に握られている。
「くそっ」
 小さく呟くと、彼は大きく足を振り上げた。
「かぁーって嬉しいはないちもんめ!」

       

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