Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

「金の玉! 一等!! 大当たりー!!」
 カランカランと気の抜けた鐘が鳴らされ、パラパラとやる気のないまばらな拍手がそれに続いた。当てた当人はガラガラの取っ手を握ったままぼけっとしていたが、係員の男に肩を叩かれてハッとしたようだった。
「おめでとう! どうしたい、そんな腑抜けたツラして」
「いや、ちょっと実感沸かなくて。こういうの、まず当たったことないんで」
 男がそういうと、係員は「そうかいそうかい」と言ってガハハと笑った。
「まあ感傷に浸るのはそれぐらいにして、景品を選んでくれ」
 係員は男をバックヤードの中へと連れていった。そのまま倉庫裏のようなところでパイプ椅子を持ってくると座るように言って、辺りの箱を探し回る。
「ああ、あったあった。これが一等の景品、というか、一等の景品を手に入れるための道具」
 係員が持ってきたのは、簡単に言えばヘッドギアのようなものだった。入っていた箱には、笑顔で人が装着している写真がプリントされ、その下には『超能力開発マシーン』と書かれている。かなり古くさいデザインだった。
「景品は超能力なんだよ。というか、それを使って超能力を手に入れる権利と言った方がいいのかな」
 男は手渡されたカタログを見た。精神感応、発火能力、瞬間移動など、メジャーな能力が並んでいる。
「で、一応それはレンタル品だから。1種類、好きな超能力を選んでよ。それを君の脳にインプットしたら、また返してもらうから」
「じゃあ、これで」
 男が選んだ能力を示すと、係員は不思議そうな顔をした。
「いいのかい? あんまり使えないと思うけど……」
「そうですか? 便利そうじゃないですか」
「まあ君の好きなものにしたらいいよ。あ、一応言っておくけど、沢山のものに同時に使うのはかなり消耗するから止めた方がいいらしいよ」
「そうですか。気をつけますね」
 男はそう答えると、ヘッドギアを被った。

 頭痛で倒れて搬送されてきた男を診て、医者は言った。
「超能力の過負荷ですな。大方一度に大量の物体に使ったりしたんでしょう」
「でも、常温のお茶をちょっと冷やしただけなんですよ? コップ一杯の水すら冷やせないなんておかしくありませんか?」
 付き添いの妻がそう言うと、医者は答えた。
「お茶を冷やすのに、冷凍能力を使ったとは限りませんからな」
「え? どういうことです?」
「本人に聞いたらどうですか。ま、これに懲りたら横着はやめることです」

       

表紙
Tweet

Neetsha