Neetel Inside ニートノベル
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 林の中を縫うように駆ける二つの影。片方の影は大きく、もう片方は小さい。
「本当にこの先にいるんだな?」
 先を行く男が後ろからついてくる少年に尋ねる。
「はい、僕がこの前見たのはこの先の広場です。その日もこんなよく晴れた日の夜でした。だから……」
「今日も同じようにやっている可能性が高い、というわけか」
 男は軽く歯を噛みしめると走る速度を一段と早めた。
「ちょ、ちょっと、待ってください! 早過ぎますよ……」
「間に合わないかもしれないんだぞ! 遅過ぎるぐらいだ!」
「待って……置いてかないで……! もっとゆっくり……」
 少年は悲鳴を上げながら男についていった。

 木立がまばらになり始めた辺りで二人はピタリと足を止めた。
「言ってた広場はこの先だな?」
「ぜえ、ぜえ、はい、そうです……」
「しっ! 静かに」
 自分で聞いておいて静かにとはなんだ、と少年が男を睨みつけたが、男はそ知らぬ顔で木の向こうへ顔をしゃくった。

 そこは林が開けて広い芝生のようになっていた。広場の中心部は少し地面が窪んで砂地になっており、そこを中心としたおぞましい儀式が取り行われていることが一瞥して判別出来た。
 互い違いに組まれた少し細手の丸太は幾何学的な櫓のような立体構造を伴いながら、冒涜的なほどにパチパチと音を立て、古代の猛獣の目のように真っ赤に光る。燃え盛る火の祠の回りにはざっと2、30人はいるだろうか、男女が車座になり、炎と煙が虚空へと消えていくのをじっと眺めている。彼らの口からは聞くからに怪しく背徳的な内容の祝詞が次々と溢れ出し、それらを唱和する声が炎煙と共に星空へと吸い込まれていく。それを見つめる目は炎を映してか星を映してか、ギラギラと野獣のように光り輝いていた。
 それはまさに、彼らが目標にしていたことそのものだった。

 その予想外の規模に二人はしばらく見とれていたが、先に我に返ったのは少年の方だった。
「で、どうするんですか!?」
「……どうするって……他にどうしようもないだろう」
 脇腹を突かれた男は少しムッとした顔でそう言うと、やおら木立を離れ、無防備に炎の方へと歩を進めた。参加者は一人また一人と男に気付き、好奇の視線を送ってくる。男はそのまま炎の真横まで行くと、急に腹這いになって地面に顔をこすり付けた。いわゆる土下座である。
「この間は意地張ってすいませんでした! 僕もキャンプファイヤーに混ぜてください!」

       

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