Neetel Inside ニートノベル
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「あれ? 旅行ですか」
「うーん、まあ旅行と言えば旅行かな。実家にだけど」
「あ、なるほど。帰省の季節か」
「夏だからねぇ。実家に呼び出し食らっちゃったよ」
「毎年のこととはいえ、この歳にもなって実家から呼び出しってのもイヤなもんですねえ」
「そうなんだよね。とはいえ家族のこと考えると帰らないわけに行かないし」
「顔、見たいですもんね」
「そうそう、それもある。そういえば君はどうするの? 帰らないの?」
「そうですねぇ……。いや、帰ろうとは思ってます。まだ予定は立ててないですけど」
「そっか、でもお盆に帰るなら急いだ方がいいよ。皆大体同じこと考えるからね」
「帰省ラッシュって奴ですよね……。あー混むのイヤだなぁ」
「いやなら時期外すしかないね。盆が明けてから帰るか、僕みたいに早めに帰るか」
「いやー早めに帰りたいのは山々なんですけどね、交通手段がちょっと手配出来なくて」
「それな! 大した手間でもないんだから早く用意して欲しいもんだわ。あんたらが帰って来てくれいうから帰る部分もあるのにな」
「ま、最近じゃあ用意するのが当たり前って風潮でもないですしね。実際、別の知り合いのとこじゃあもう用意してくれないって言ってましたよ」
「そんなもんかー。そういう時は組合の用意してくれた乗り合いバスにでも乗るしかないんかね」
「そうですね。時代の流れって奴ですかね」
「いやホント世知辛い。用意してくれる家族でホントに良かったわ。おっとまずい、そろそろ時間だわ」
「あ、引き止めてすいません。じゃあ、お気をつけて」
「おう、そっちも身体に気をつけてな! って、身体はもうないんやったな、ハハハ」
 先輩の魂が胡瓜の馬に乗って下界に降りるのを見送ってから、僕もそろそろ帰省を考えないとと思った。

       

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