Neetel Inside ニートノベル
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「これで本当に上手く行くのかね?」
「ええ、今は現地は原始宗教の安息日だそうで、戦闘活動は行われていないそうです。最前線にさえ向かわなければ陛下が巻き込まれることはほぼないでしょう」
 地図を指差しながら側近が説明する。
「最前線というのは? ここか?」
「あっ、いけません陛下、勝手に操作しては」
『目標変更受諾。紛争地域の為、緊急着陸モードに移行します。緊急降下中……』
 注意された時にはもう遅い。地図機能付きコントロールパネルで着陸場所を指示された宇宙船は緊急着陸モードに移行し、一気に降下を始めていた。

「いてて……ここは?」
 土煙が晴れ、視界が開けると同時に、皇帝は状況を確認した。今自分がいる場所は、どうやら原住民たちの集団の丁度ど真ん中であるらしい。その周りを自軍兵士たちが取り囲み、武装した原住民たちと睨み合いになっていたようだ。もっとも墜落事故の衝撃の為か、両軍とも指揮系統が乱れて戦闘どころではなくなっているが。
 やれやれ困ったことになった。ここからどうやって無傷で切り抜けようか。そう皇帝が思案していると、間近にいた原住民の一人が口を開いた。
「カミ……」
「あ?」
 皇帝は困惑した。しかしその言葉を皮切りに、原住民たちは突然に武器を投げ出すと騷ぎ出した。
「カミ=サマ……」
「カミ=サマ!」
「カミサマ!!」
 中には腹這いになって手を擦り合わせたり額を地面に摺り付けたりする者もいる。騷ぎの中心となった皇帝はしばらくあっけに取られて黙っていたが、気を取り直すと側近に話しかけた。
「……これはどういうことかね?」
「ハ、ハッ、彼の者たちは、陛下を『カミ』……彼の者たちの言葉で彼らよりも上位の存在を意味する概念として認識し、崇敬の念を抱いているものと推察されます」
「カミ……」
「ハッ、彼の者たちによれば『カミ』は『ヒト』……この世界における一般的な知的生命体では成しえぬような奇跡を起こすと伝えられているそうです」
「奇跡? この者たちは能力的には我々と何ら変哲もないのだろう? 何故私をそのような存在だと認識しているのかね」
「さあ……我々にもさっぱり……」
 原住民たちは皆地面に身体を投げ出して神妙な口調で何かを呟き続けている。つい先日まで鬼神の如き勢いで弓矢と竹槍を持って立ち向かってきたと聞き及んでいた彼らとはまるで別人だ。その理由を理解出来ない侵略者たちはただただ困惑するしかなかった。

       

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