Neetel Inside ニートノベル
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「ちょっと、そんなに持ってきて大丈夫なの? お腹痛かったんじゃ」
「大丈夫だよ。もう痛いのは治ったし。それより見て見て」
 男の持ってきた皿を見て女は軽く顔をしかめた。皿の上には赤・茶・黄色味がかった白の半固形物が混ざりあって乗せられている。
「どう? 旨そうだろ。他にも色々あったよ」
「旨そう……にはあんまり見えないかな……。イチゴ、チョコレート、バニラ?」
「そうだよ! ナポリタン・アイス。最高の組み合わせじゃん? 人気の組み合わせらしい」
「美味しいは美味しいだろうけど、見た目もうちょっとなんとかなんないの? これじゃまるで……」
 男の嬉しそうな顔を見て、女は後に続けようとした言葉を飲み込んだ。

 見た目のグロテスクさに反してアイスは中々美味しかった。といってもグロかったのは男の盛り付け方が悪かったせいだが。
「思ったより美味しかったね」
「だろ? 自家製の香料と生クリームを使ってるらしい」
「あんたが自慢してどうすんの。ただ不味そうに盛りつけただけでしょ」
「なんだと! じゃあ今度こそ旨そうに盛りつけてやる。覚悟しとけ」
「え、私もう要らないんだけど……」
 女の溜息は戻ってきた男の皿を見て困惑に変わった。
「何この色?」
「ええと、チョコミント、キャロット、パンプキンだったかな?」
「ニンジンとカボチャのアイスクリーム? そんなのあるんだ」
「日替わりアイスだって。色取り取りで目に楽しいだろ」
「楽しいっていうか」
 ケバケバしくてキモい、という言葉はやはり飲み込むしかなかった。大体なんでその3種類の味を混ぜようと思ったのだろう。これでは血だの精液だのを通り越して絵の具だろう、と女は思った。
「私お腹いっぱいだから食べないよ」
「えー要らないの? じゃあいいよ、俺全部食べるし」
「お腹壊さないでよ? 治ったからって調子に乗られたら困るのはこっちなんだから」
「しつこいなー。そんなにお腹壊して欲しいのか?」
「なっ、せっかく人が心配してるってのに」
 大口開けてアイスを頬張る男を見ながら女はネットスラングを思い出さずにはいられなかった。
 ここはとあるレストラン……人気メニューは……ナポリタン……
 突然男が叫んだ。
「うっ……なんか混ざってる? 何これ、虫だ……うええええ……」
 男が吐き出したアイスの残骸がべちゃりと床に落ちる。それはやっぱりパレットから溢れた絵の具のような色合いに見えた。

       

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