Neetel Inside ニートノベル
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 目が覚めてすぐに、私は新聞を確認した。今日の天気は全国的に晴れ模様。高気圧を列島が覆って傘要らず……駄目だ、判別がつかない。雨が降っていれば一発なのに。
 私は携帯を取り出した。LINEチャットのログを遡るが、当たり障りのない業務上の案件の話しか出ていない。直接聞くしかないか。まだどっちでも始業前だから、誰か応答してくれるはずだ。とはいえ聞き方には気をつけなくてはならない。迂闊なことを言えばおかしくなったと思われてしまう。予定表を確認。会議の場所ぐらい予定表に書けよな……。メッセージはあくまで業務上必要があるから聞いたように偽装しつつ、相手から必要な情報が落ちるのを期待出来るような内容だ。
『今日の会議って部長いるよね? 資料どうすればいいかな?』
 よし、特に不自然な点もない。これを放流して、『手渡す』とか『メールで送っておく』とか具体的な手段が同期から送られてくるのを待つだけだ。その前に他の手段を探すことにする。名刺は以前調べたけど書いてあること全く同じで駄目だった。通勤ルートはどうだろう。カーナビや地図アプリに勤務先情報が登録してあるかもしれない。
 車内に入ってカーナビの電源を入れた時、LINEの通知音が鳴った。さっきのメッセージの返信だ。
『部長出られなくなったから資料はいつも通りでいいって〜』
 返事は内心ズッこけそうな内容であった。いや、本人には何の悪意も意図もない。質問に対して親切で送ってくれたのだろう。それは感謝する。でもこれでは肝心の私が向かうべき場所が分からないではないか。質問をした意味がない。私は諦めてカーナビのお気に入り登録を呼び出した。案の定、というかやはり、というか、勤務先の情報は登録されていなかった。
 もう始業まで時間がない。出掛けるのであれば出なくてはならないタイミングだ。一応出勤しなくてはいけない場合に備えてスーツは着た(ちなみに出勤しない世界であればそもそもスーツが用意されていないはずなのだが、どういうわけか家の中のレイアウトはどっちの世界でも統一されている)が、実際に出発するかどうか。もし違っていた場合、わざわざ車を出しておきながら遅刻というみっともない事態になってしまう。こうなりゃ神頼みだ。私は自己流で雨乞いを始めた。

       

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