Neetel Inside ニートノベル
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先輩は尊い。
先輩は愛おしい。
先輩ハ神聖ニシテ侵スヘカラス。
いや、そこまでではない。いうよりは、私にはそう言うだけの権利はない。
何故って、私は先輩の恋人ではない。
でも、「先輩ノ笑顔ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」ぐらいは言っておきたい。
これは先輩の笑顔を守るためなのだから……。
私は決意を新たにすると、先輩と染田さんの3組後ろから、遊園地へと入っていった。

デートまでこぎつけたのはこれで2度目だ。前回は上手く行かず発展的に解消してしまったが、今回はこの軍師リョーコの技をとくとご覧に入れましょう。全ては先輩の笑顔の為……。
あ、こら。先輩、こっち見ちゃ駄目ですって。何こそっと手振ってるんですか。気付かれたらどうする、っていうか、貴方デート中なんだからもっと染田さんにアピールして! 恥ずかしがってる場合じゃないから! もっと相手の目を見て! 会話して! スキンシップ取って〜〜!!!
やきもきする。アイスクリームのスプーンが口の中でバキッと鳴った。先輩は恋を甘く見ている。恋は戦争なのに。戦況は未だ不利なのです! もっとハート狙って!
染田も染田だ。こんなに可愛い、美しい、凛々しい、愛おしい先輩が、こんなにも好き好きビームを全身から出して、男ならもっと積極的にエスコートするだろ! なんでそんなに淡白なんだよ!
クソ、クソ、クソ。スプーンの割れ目が一噛みごとに大きくなっていく。何がやきもきするって、二人の仲が進展しないことにホッとしている自分が、一番許せない。
私は携帯を取り出すと、先輩の番号をタップした。事前の打ち合わせ通り、3回のコール。
作戦:恋確機動隊(ゴーストインザラブ)、状況を開始せよ。

「まあ、そんなに落ち込むなって。リョーコが悪いわけじゃないよ」
「なぐさめないでぐだざい〜〜……一番落ち込んでるはずの人に慰められたら私はどうすればいいんですかぁ〜〜!!」
結局、いつもの店で私達は二人きりの反省会を開いていた。
「にしても、まさか染田さんがお化け屋敷苦手だったなんてねー」
「ホラー映画鑑賞が趣味だと思ってたのに……まさか苦手克服の為とは思いませんよ……」
「ま、今回は調査が足りませんでしたな、軍師殿!」
そう言ってワシワシ頭を撫でてくれる先輩の手の温もりが、とても愛しくて。先輩の笑顔を守れなかった悔しさ、先輩を取られなかった喜び、それらが混じりあって目から溢れて。
私はまだ当分、泣き止めそうにない。

       

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