Neetel Inside ニートノベル
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僕は、いつも何かに急かされるように走り続けている。時に上から落とされたり、罵声を浴びせられたりしながら、転げ回って必死に前へ進んでいく。普段は走ることに精一杯で、その先のことなんて考えない。けれどいざ止まるべきところに辿りつき、僕を送り出したその手を眺めると、なぜかとても寒々した気分になる。こんなに必死になって走って、飛んで、それで、僕は自分の中に何かを積み上げられたのだろうか。ただひたすらに追い立てられて、振り返ることも出来ず、行きつくまで休憩も許されない。そんなことだけしていていいんだろうかと、心が騒ぐのだ。
せめて、羽根があったなら。どれほど迷っても、僕たちは一度投げ入れられれば、ただ走ることしか出来ない存在だ。それ以上も、それ以下も認められない。どれだけ目指す場所があっても、ハマりたくない穴があっても、途中で力尽きてしまえば、それでおしまい。後はなすすべなく、何かに引っ張られるように赤と黒のタイルの狭間に真っ逆さまだ。時々上手く壁を蹴り上げて復帰したり、持ち上げられることはあっても、結局は落ちることそのものから逃れることは出来ない。こうやってうだうだ悩んでみたところで、それを実行に反映することすら出来ないのだ。
悩みというものは、僕にとっては本質的に不要なものなのかもしれない。でもそんな不要なものに悩まされて、僕は落ちるたびに更なる思考の穴に落ちていく。考えろ考えろ。思考の穴から這い上がるには思考し続けるしかないのだ。人の手は、現実の穴には差しのべられても、心の中までは届かない。どんなやさしい言葉を厳しい言葉をかけられようと、最後に効くのは自分の力なのだ。だから、常に考え続けなければならない。考えて絶望して、それでも苦闘する。それは苦しいことだけど、それが考えることを手にした者の宿命だ。

「赤の15番です。全て外れですね。まだお続けになりますか?」
そんな声を聞きながら、僕はまたディーラーに持ち上げられた。

       

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