Neetel Inside ニートノベル
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日替わり小説
2/25〜3/2

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 ほとんどの霊が寝静まった朝10時。署員の動きが慌しくなる。「不審霊あり」の通報だ。
「人間界日本、○○県××町……にて、騒霊現象の発生。心霊現象対策法第3条の6号に指定。同法第2条に基き霊界署への対策要請」
「了解。直ちに現場に急行し、事態の収拾にかかる」
 こうしたポルターガイスト現象は、決して珍しいものではなく、月に数回ほど発生するという。今回現場に向かうのは、イタバシ・マサル警部補以下5体のチーム。イタバシ班長は、ポルターガイスト対応の指揮は今回が初めてだと言う。
ーー怖くはないですか?
「いや、前にも(班員として)参加しましたから、そういうのはないですね。指揮するのは初めてですけど、そんなに難しい任務じゃないですし」
 どんな捕物が繰り広げられるのか。我々も、早速その現場へと足を進めた。

 ○○県××町。中心街から離れた閑静な住宅街に、問題の家はあった。見た目は、ごく普通の民家。狭いが庭付きで、それなりに大きく綺麗な住宅だ。こんなところに本当にポルターガイストが現れるのか。
「総員準備開始。配置に付き次第、偵察指示を出す」
 班長の指示が飛ぶ。今回の捕物では、イタバシ班の4名は二手に分かれる。1チームはポルターガイストのいる書斎の窓から、もう1チームは正面玄関から突入し、裏口から班長が指示を出しつつ詰める。家主には霊感がないので、捜査霊状や事前交渉はなしのぶっつけ本番だ。カメラも安全の為、中には入れない。外から様子を見守る。
「アルファ・チーム配置完了」
「ブラボー・チーム配置完了」
 班員から配置完了の念波が飛ぶ。同時に、家の中からカタカタと怪しげな音が聞こえ始めた。ポルターガイストが始まろうとしているのだ。もはや一刻の猶予もない。イタバシが緊張で顔を強張らせながら、指示を出す。
「総員、突入!」
 音もなく突入していく幽霊たち。暴霊鎮圧のエキスパートである彼らは、可能な限り家主に迷惑をかけぬよう、訓練を欠かさない。
 外に聞こえるポルターガイストの音が激しくなる。捕まるまいと必死の抵抗だ。「あっちに行ったぞ!」「回り込め!」それに応じて班員の鋭い念波の指示が飛び交う。
 やがてイタバシたちが、1体の男の幽霊を連れて民家から姿を現した。確保完了。男はのちに調べに対し、「幸せそうな家庭をブチ壊してやりたかった」と供述した。
 悪辣非道なポルターガイスト。男には、念仏6ヶ月が言い渡された。

       

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