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 貴方は野外プレイ愛好家だろうか? もしそうならば、今月いっぱいは杉○区議会の議論に注目した方がいいかもしれない。
 杉○区議会で2週間前に提出された条例の改正案は、「路上猥褻行為禁止条例」と呼ばれているものだ。これは、「生活安全に関する条例(いわゆる路上喫煙禁止条例)」の改正案として提示されているものであり、文字通り路上における性的行為に関する取り締まりを規定することになっている。この改正案が可決されれば、杉○区内の公道において猥褻な行為に及んだものは2万円以下の過料を課せられることになる。
 こうした条例案は、一部の市民の要望によるものだとサカシタ区長は説明する。「性行為が生殖、出産と切り離され、娯楽としての性行為や対人コミュニケーションとしての性行為が増加しています。こうした社会の急速な変化には肯定的な人と受け入れられない人がいますから、自治体としては住み分けが出来るよう、公的な場所を管理していく義務があると考えています」
 公的な場所での猥褻な行為が風紀の乱れを産むという認識は、以前は広く社会的に共有されている意識でもあった。議会に条例設置を働きかけた団体『杉○区の風紀を守るネット』代表のエガミ・アヤノ氏はこう語る。「公道は若者だけの場所ではありません。老人や子供、赤ん坊を連れた養親が猥褻行為を見かけたらどう思うでしょう。他者に害意を与えたり、児童の発達に悪影響を与えうる内容は、家の中で隠されて行われるべきなのです」
 こうした考えは至極一般的なものに思える一方で、反対者はこうした考えの為に条例を改正するのは現実的ではないと主張する。「この国には既に『公然猥褻罪』や『猥褻物陳列罪』などが刑法で規定されています。杉○区で他地方と比べて野外プレイが流行っているというわけでもありません」と『セクシュアル・ライト・ナウ』のイトウ・シンゴ氏は言う。杉○区は「条例案における性的行為は刑法における猥褻行為に収まらない範囲に限定されるものであり、刑法とは衝突しない」と説明しているが、イトウ氏は「猥褻でない性的行為を規制する合理的な理由がない」と反発する。
 かつて、煙草は現代とは比べものにならないほど人口に膾炙し、多くの人が親しむ嗜好品だった。それを駆逐する切っ掛けとなったのが、「路上喫煙禁止条例」の流行だ。現代の潔癖症患者たちは、セックスにも同じ道を辿らせようとしているのだろうか。

       

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