Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

「えっ、お前昨日テレビみてなかったの?」
 クラスメイト全員から驚きの目で見られ、俺は慌てて刈谷の発言を否定した。
「見てないわけないだろ、俺だって代表戦ぐらい見るさ」
「でも見てねえんだろ? 電波ジャック」
「そんなこと言われても知らないよ。俺はちゃんと日韓戦見てたし、その間変な映像で中断されるみたいなこともなかったんだよ」
「んー怪しいなぁ」
 刈谷を始めクラスメイトの発言を総合するとこうだ。昨日の代表戦の中継時に、突如謎の映像が挿入された。前半38分、後半の6分と46分……つまり日本の得点したシーンは全て、マネキンの頭部のCGと英語のテロップ映像によって遮られていたのだそうだ。「だそうだ」というのは、俺はそんな映像を見ていないからである。TV局には当然非難殺到で、その後お詫び番組が放送されたそうだが、生憎俺は代表戦の後はテレビを見ていなかったので知らなかったというわけだ。
 電波ジャック。要するにTV局が使っている電波と同じものを使って、その「クソ映像」(by刈谷)を「放送」した奴がいるということだ。俺以外のクラスメイト達は、不幸にもその「放送」でサッカー中継を上書きされてしまった、ということらしい。

「だからさ、どうしてわざわざ嘘をつくんだよ? もしかしてお前が電波ジャック犯だったりするのか? もしそうなら……」
「なのなぁ……」
 俺が犯人などとは荒唐無稽もいいところだったが、刈谷の追及はしつこいことで有名だ。どうやって交わそうか考えていると、クラスメイト達が急にザワつき始めた。刈谷も俺への追及を中止してわたわたと両手を振っている。
「やっぱり君には効かないね」
 後ろからした声に振り返ると、そこには見覚えのない少女が立っていた。
「誰だ?」
「答える義理はないな。重要なのは、私の力が君には効かないということ」
「……昨日の電波ジャックの犯人か」
「正確には電波ジャックじゃなくて『脳波ジャック』ね」
「これもお前の仕業か?」
 後ろの方へあごだけしゃくる。
「うん、確認の為にね。悪いんだけど、能力が効かない人がいると不味いんだ。だから」
 少女はニコリともせずにそう言った。
「死んで?」
 後頭部に強烈な痛みが走る。振り返ると、机を振りかぶった刈谷が立っていた。その目は茫洋として虚ろだ。皮肉の一つも言ってやろうと思ったが、残念ながら意識の方が先にが途切れた。

       

表紙
Tweet

Neetsha