Neetel Inside ニートノベル
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「里崎、今日来る?」
「んーどうしよっかなー。横井さん来るって?」
「いや、彼女はもう全然無理。取りつく島もないわ」
「じゃあパスだな」
「そう言うなよ。横井さんはいねえけど代わりに労務や秘書課の可愛い子が来るらしいぜ?」
「わりぃけど、用事あんだよね。横井さんの為なら覆る予定でも他の子じゃあ無理だわ」
「ハイハイ。お前頑固だもんなー、誘う甲斐ないわーマジで」
 今西が去っていったのを見て、俺はそっと溜息をついた。今西も悪い奴ではない。むしろいい奴の部類なのだが、そのいい奴成分がこうして飲み会方面に発揮されるのは勘弁して欲しいと俺はいつも思っていた。今はなんとか交わしているが、二課のマドンナが今西の攻めに屈したらいよいよ俺も危なくなるだろう。イヤな想像を振り払うように「お先に失礼します」と席を立った。

 チャットルームに入る時に今でも手が震えることがある。初めの回はいつだって、少しの緊張と、たくさんの興奮に満ちているのだ。
>> エンガワ:ピッタリ時間通り!
>> 大天使:いつもギリギリですんません^^;
>> ようこう:お仕事忙しそうですもんね。仕方がないですよ
>> 大天使:仕事もだけど、飲み会の誘いがねー。角が立たないように断るの大変で
>> エンガワ:別にきっぱり言えばいいやん
>> 大天使:なんか上手い方法ない?
>> ようこう:私は別の絶対参加しない人を引き合いに出して、「その人が出てこないと行かない」って言ってます
>> 大天使:それ、まさに俺がやってる奴www
>> ようこう:えええwww
 ようこうさんとは特に気があった。話が合うだけでなく、生活リズムも合うのか、セッションで一緒になることも多かった。
 もし、ようこうさんが横井さんだったら、という妄想を時々する。厄介な飲み会を二人でフケてセッションに一緒に興じる、知らず知らずにそんなことをしていたのだとしたら、それは最高に面白いだろう。
 だがまあ、妄想は妄想のうちが一番楽しい。だから俺は答え合わせはしないことにしている。ようこうさんもそこは踏み込んでこないので、俺の幸せな妄想空間は守られていた。
>> TRF@GM:それじゃ揃ったんで、始めていきましょー
 GMが開始を宣言して、セッションが始まった。

       

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