Neetel Inside ニートノベル
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 ジェット機とセスナ、ジープを乗り継いで15時間、アマゾンの奥地へ辿りついた。もうすぐ位置マーカーが示す地点につく。その方向に目をこらして探すが、それらしい影は見えない。……いや待て、あれはなんだ? ジャングルの森林の上に、空気が渦を巻いて一塊になっている。透明な空気の塊が鳥の形に光を歪めて存在している。首を曲げた形はあたかも猛禽類を思わせた。
 我々が空気の塊を監視していると、向こうから紙飛行機の一群が飛んできた。地元のレースだ。紙飛行機群が森の上にさしかかると、空気の塊が突如躍動した。凄い勢いで紙飛行機を襲い、片端から飲み込んでいる。紙飛行機は逃げるので精一杯。どうみても今回の失踪事件の原因だった。

 過去のレース鳩と比べて、レース紙飛行機は個人の魔術スキルによって帰巣能力が大きく左右されるため、失踪することが多いと思われやすい。しかし実際には、猛禽類などの天敵がいない紙飛行機は途中で消える可能性が低い。ましてレースに出るような人の魔術スキルが低いなどということはあり得ないから、生存率はレース鳩よりも遥かに高いと言える。だからこそ、紙飛行機レースが鳩レースに取って変わったとも言える。
 紙飛行機が失踪する原因として最もあり得るのは雨や雪、強風などの天候要因によって紙飛行機が物理的に壊れるケースである。こうした天候による失踪は突発的に発生するものだが、天気予報によってある程度予測はつけられるし、同じレースに出翔していた紙飛行機は基本的に全滅するのである意味平等だし分かりやすい。
 しかし今回のケースはそれとは異なる。レースはもちろん事前調整の時は天気の良い日を選んでいたし、同じ日に飛んだ機体でも帰ってきているものもあるのだ。かと言って特定のチームが狙い打ちされているわけでもない。更に不思議なことに、失踪した全ての飛行機は同じ場所に集まっていることが発覚したのだ。そこで我々が合同で調査チームを組んで、こうしてアマゾンまで来るにいたったのだ。

「何なんだあれは……魔法?」
「いや、あんな大掛かりな魔法を使える人はそうそう……それに無差別に紙飛行機を襲う理由がない」
 我々が見えない敵の存在を議論していると、例の空気が首をもたげ、凄まじい音を発した。鳴き声と言うべきだったかもしれない。
 それは、クルックー、とも、ポッポー、ともつかぬ間抜けな音であった。

       

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