Neetel Inside ニートノベル
表紙

ぺなるてぃ!
一章 折れず、曲がらず、全くキレない!

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「趣味」ってものが、誰でも何かしらあると思う。いや、無い人も居るかも知れないけど。私の場合、それは他人に誇れるようなものではない。ああ、いつの頃からだろうか、私が「ゲーム」というものに魅了されてしまったのは。
「私は人間をやめるぞー!……えーっと」
などと、どこぞの台詞を流用してきたところで聞く者はいない。所謂独り言だ。それというのも、今日も今日とていつも通りに一人でゲームに没頭しているからだ。
 高校入学を機に、念願の個人端末を買ってもらったわけで。これまた念願だった「オンラインゲーム」を早速ダウンロード。やばい。ニヤつく顔を抑えることが出来ない。自分自身でこの様子を客観的に見ようものなら、あまりの痛々しい姿に目を背けたくなるに違いない。ああ、だとしてもなんて甘美なのだろう、「オンラインゲーム」というものは!今私がプレイしようとしているのは「トゥインクルスター」という、絵柄が可愛い系のオンラインゲームだ。特に前情報を調べているわけではない。だってやったことないし。チョイスは完全にノリだ。楽しめれば何でもいい。そう、初めはそんな軽い気持ちだった。
「スタイル的にやっぱり格闘家だよね~、魔法はなんか性に合わない気がするし。」
誰も聞いちゃいない独り言をぶつくさ呟きながら職業を選ぶ。こんなことを言ってはいるが、現実の私は格闘どころかチビでひ弱な、友達の居ない根暗女に過ぎない。別に友達が居ないことに思うことがあるわけじゃないけど、何もゲームの中でまで現実を踏襲する必要などないのだ。
「名前?うーん何がいいかなー」
自分の分身となるキャラ名につまづいた。変な名前を付けてしまうとそれをずっと使い続けなければならない。はたして女の子のような名前がいいのか、はたまたそのことは隠した方がいいのか。……分からないな。だってやったことないし。大切なことですので二回言いました。まあキャラが女の子なんだし、ここは女子ネームで構わないだろう。悩んだ結果、分身の名前は「彩葉雪」となった。

「なんだ、これ……どうしたらいいんや……」
死ぬ。とにかく、死ぬ。いや、厳密には「死」んでるわけじゃないんだろうけど。とりあえず便宜上死ぬ。そう。私は別段上手いわけではない。単にゲームが好きなのだ。RPGなのだから、とりあえずレベルアップを、と思ったのはいいが、敵を倒すことが出来ない。なんだこれは、クリックすればいいのか、スキルを覚えればいいのか、誰か教えてくれ。だー!!また死んだ!これは慣れるまでに時間がかかりそうだ。ダウンロードとインストールを経て、時刻はもう0時を回っていた。明日も学校だし、この辺にしておこう。追々分かってくるだろう。ゲームできるくらいの脳みそは持っている。……はずだけど。



「……ダメだ。」
トゥインクルスターを始めて今日で5日目だが、非常に重大な問題が発生した。とにかくキャラが弱いのだ!!堪りかねて○○kiで調べてみたのだが、まず根本的にステータスの配分方法(通称「振り」)がダメだ。補助的に魔法も使えればカッコいい、とか思い、魔法ステータスにも振っていたのだが、とにかくキャラが脆い。速攻で死ぬ。どうやら格闘家は体力系のステータスに振らなければやっていけないらしい。加えてスキルの問題だ。適当はダメだ、戦闘にならない。これらも踏まえて、さあ生まれ変わる時だ!
 こうして「彩葉雪」は消滅し、新たなキャラでの再スタートを着ることになった。……5日目で。
「先が思いやられるな……。他のゲームもやってみた方がいいのかな……」
いやいやいや、それでは堪え性が無さすぎる。一端のゲーマーならもっと遣り込んでみるべきだ。

またもキャラ名に苦悩し、新たなキャラの名前は「風雪佳」となった。……今度は長生きするといいんだが。……それにしても、ゲーム内で友達の一人も出来やしない。どうなっているのか。弱過ぎるのがいけないのか。まあ追々そういう機会もあるだろう。今はただ、ストイックに上を目指そう。初心者に何か教えられるくらいになれば、友達くらいできるだろう。現実世界では誰からも頼りにされない私だが、遣り込めばきっと!
「……おっとっと。そういう考え方は良くないよね。現実世界で頑張らなきゃならないんだよなあ。……面倒だなぁ。」
 二次元を逃げ場にしようっていうのはダメだ。ダメな気がする。私あっての「風雪佳」だと、そう思わなければ。……と、この時はまだこう思っていた。友達も居ないしね。

       

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