一滴ずつ毒を

本日の創作テーマ/モチーフ/お題は、

『永遠』『が壊れる』
#本日の創作テーマモチーフお題
https://shindanmaker.com/594972




『一滴ずつ毒を』



 ヒロは十七歳の女の子です。けれども学校には通っていません。直ぐ眠ってしまう持病があり、ヒロの記憶にはありませんが、日中でもどんな時でも眠りに落ちてしまうという危険な病だと、ヒロは説明を受けています。
 ニュースがテレビから流れているのを聞きながら、ヒロはぼや、と目を開けました。ソファーの上で寝てしまったようで足元に犬のトワコが同じように寝転んでいました。ふさふさの毛が足首や足の甲に触れてヒロはくすぐったくて、伸びを一つしました。触れるか触れないかのタッチでその毛を撫でると、指先を柔らかな感覚が滑っていきました。トワコは室内で飼われているまだ小型犬くらいの大きさのゴールデンレトリーバーで、いつもヒロと一緒にいる女の子です。丁度良い温度に保たれた室内で、Tシャツやショートパンツから伸びるヒロの手足はソファーの毛皮とトワコの毛皮に包まれていました。トワコを起こすように両耳辺りを掴んで撫でても、トワコは起きません。動かなくなったトワコにヒロは驚きながら何度も身体を揺すりました。トワコは目を閉じたまま、大人しく揺さぶられるがままになっています。フローリングにホバリング音が響いて、ヒロは顔を上げました。室内に入ってきた円柱型ドラム缶のような大きさのロボットに、ヒロはパパ!と声をかけました。
「トワコ起きないの、目を開けないの!」
「きっとトワコは寿命だったのでしょう」
「寿命ってトワコはまだ三歳だよ!?」
「そうですね、トワコの身体は三歳です」
 ジーと機械音を立てながら、パパと呼ばれるロボットはヒロの手からトワコを持ち上げていきました。脈拍停止、死後数分経過、死因は……外部的損傷ではない、恐らく心不全、直接原因は解剖にて、淡々と読み上げるロボットに対して、ヒロは何言ってるの!と声を荒げながら機体を叩きました。人間でいうと腰辺りの部分から読み上げたことを文字にした紙が出てきます。
 ロボットは左のアームでトワコを抱えると、右のアームでヒロの頭を撫でました。ヒロはトワコの身体を取り返そうとしましたが、ロボットはアームを伸ばして届かない高さにまで持ち上げました。飛び跳ねたところで到底届かない位置にいるトワコをじっと見つめるヒロの目には涙が溜まってきました。
「今日は数学、複素数を勉強する日ですよ」
 ヒロの頭を撫でながら、ロボットは机を示唆しました。ヒロは涙目で首を振りました。
「知らないよ!三角関数するって言ってたのに、嘘吐き。嘘吐き!嘘吐き!」
 ロボットはまた淡々と何かを読み上げ、紙を印刷し続けました。一頻りロボットを叩いたり、泣き叫んだり、暴れたヒロは結局トワコの遺体を抱く事は出来ず、眠りにつきました。テレビは最新のニュースから問題提起の報道に変わっていました。
 
 数十年前に生命活動を現在の状態で維持するという物質が発見されました。
 その物質を使えば、進化も退化もせず、その代わりに現存の状況を何日先、何年先でも維持出来るそうです。野菜は新鮮なままで保持され、動物は老いることなくその状態で存在するのが可能です。人々は不老、という願いが叶うと、この発見が一般化されることを夢見ました。しかし、すぐに人間への副作用が不明であること、脳も現状維持のままとなるので新たな知識や記憶を増やせないこと、が明らかになりました。
 そこで人体実験に至るまでの動物実験、部分的な効果の発現を目的とした研究が至る場所、各国各機関で活発化しました。ある程度成果が得られれば、次は人体実験となる予定です。被験者としての人身売買が行われる可能性が高く、闇での人身売買がより加速する、これは人道的な大問題です。さて、今日は専門家である……



 ニュースがテレビから流れているのを聞きながら、ヒロはぼや、と目を開けました。ソファーの上で寝てしまったようで足元に犬のトワコが同じように寝転んでいました。ふさふさの毛が足首や足の甲に触れてヒロはくすぐったくて、伸びを一つしました。触れるか触れないかのタッチでその毛を撫でると、指先を柔らかな感覚が滑っていきました。トワコは室内で飼われているまだ小型犬くらいの大きさの柴犬で、いつもヒロと一緒にいる女の子です。丁度良い温度に保たれた室内で、Tシャツやショートパンツから伸びるヒロの手足はソファーの毛皮とトワコの毛皮に包まれていました。
 ヒロは、トワコの毛が短いことに違和感を感じながらも耳の辺りを撫でました。