Neetel Inside ニートノベル
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 しかし僕は目を覚ましたのは夕方。日の暮れる頃、牢の中にも斜陽が差していた。
 これはおかしい。静香さんは綾香さんを説得に行き、俺は晴れてシャバに出れるはずだったのだ。
 何なら綾香さんから直接お詫びの品でも貰えるのではないか。そう思っていたが。
 そして小腹が空いた。昼も食べていないのである。
 
 俺は聞き耳を立てる。特に動きはない。
 ここはどこだろうか?檻のスキマから目を凝らし、窓のほうを向くが外は遠くの山と空しか見えない。
 俺は急に不安にかられる。静香さんはウソを付いていたのだろうか?それとも俺の事を忘れて今頃ディナーにでもふけっているのだろうか。
 胡坐をかいてすわり、俺は羊の数を数える。
 落ち着け。今の俺にはどうしようもないのだ…

 たっぷり日が暮れた夜。
 こつ、こつと音を響かせ、その女は現れた。
「ごきげんよう、こう言ったらあんたは喜ぶかしら?」
高坂綾香だ。俺は度肝を抜いた。
多分声を当てたキャラの真似をしているのだろうが。それよりも格好である。
ダサいデザインのTシャツに下はスウェット。そしてアイスを手にしている。
「何とか言ったらどうなの?」
俺は久しぶりの会話のせいか、状況に驚いていたせいか上手く声を出せず、辛うじて言った。
「ここから出してくれないか?誤解で捕まったという話は伝わってないのか」
「誤解じゃないわよ。アンタは酒屋で私を助けずに逃げていった腰抜けじゃない。あの後大変だったんだから」
「あー、それについては謝ります。すみません。けど」
「けどじゃないわよ。あんたが悪いの。だからここで暫く頭を冷やしていなさい」
言い放って綾香は立ち去ろうとする。
「ちょっと!」
俺は声を上げる。彼女が振り返る。
「なに」
「パソコンとスマホをくれないか。俺は飢え死んでしまう」
けらけらと彼女は笑った。
「渡すわけないじゃない。ここは牢獄なのよ?」
「いい加減にしてくれ。そもそもいつまで閉じ込める気なんだ」
「私の気が済むまでね」
「出て行ったら一生悪口をネットに書き込んでやる…」
「なら出さないわ」
俺は絶句した。
「そういう陰湿なところも直しなさいよ。あんたみたいな豚にはお似合いよ」

こうして俺の監禁生活は始まった。

       

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