「ふっ……うっ……うぅぅぅ」
 家の中は静かで、わたしの泣き声だけがひびいている。大きな声を出したって、誰もなぐさめてくれない。
 本当は、気にするほどのことじゃないのかもしれない。大勢で一緒にいれば、時々、誰かに腹が立つときだってある。陰口を言っていた子も、全員が全員、わたしを嫌っているわけではないのかも。ただ悪く言う子に合わせて、仕方なく言っていたのかもしれない。
 そうやって自分に言い聞かせるのに、涙は止まってくれない。もしかしたら、わたしは友達みんなに嫌われているのじゃないかと、不安でたまらない。もしかしたら空ちゃんも、付き合いを断ってばかりのわたしに、あきれているかもしれない。もしかしたら、パパやママだって、産んでしまったからわたしを育てているだけなのかも。本当は、お仕事をもっと頑張りたいのかもしれない。わたしは誰からも愛想をつかされてる。嫌だ、そんなのは耐えられない。できることなら、周りの人たち全員に好かれていたい。でもきっと、それは無理なんだ。
「パパぁ、ママぁ、おばあちゃぁん……」
 長いあいだ、わたしは泣き続けていた。
 気持ちが落ち着いたのは、泣き疲れたころ。まくらから顔を起こすと、カバーが涙で濡れている。洗濯物が増えてしまった。なんだか自分が情けない。
 仕方なく、鼻をすすって洗面台に行く。ついでに、腫れぼったい目と赤い鼻先を洗い流した。冷たい水を浴びて、気持ちが切り替わる。
 へこんでばかりはいられない。つらいことがあるのはしょうがない。それでもわたしは、パパやママみたいな立派な大人になるんだ。さあ、今日も夜まで勉強しよう。


 次の朝、玄関を出ると、空ちゃんは変わらない笑顔で迎えてくれた。
「おはよー……あれ?」
 わたしの顔を見て、不思議そうにする。目が腫れてるのばれちゃったかな。昨日ちゃんと洗っておいたんだけど。
「今日は髪の毛むすんでないんだね」
 解かしたままのロングヘアーを指さされる。
「あ、う、うん。気分転換。こういう髪型っていままでしたことなかったから」
 わたしはうそをついた。本当は、怖くて結べなかったんだ。髪留めをしてきたらまた、バカにされるんじゃないかって。
「ふーん……そっかあ。でも、その髪型も似合ってるね。かわいい」
 空ちゃんはわたしをほめると、今度は横を向いて、自分の頭を見せた。
「ほら、あたしは穂波ちゃんにもらったやつ付けてきたよ」
 頭の片側だけに、小さなしっぽが結んである。空ちゃんが嬉しそうに跳ねるたびに、しっぽもフリフリと揺れる。かわいくて、元気で、空ちゃんにぴったり。
「空ちゃんも似合ってるよ。ありがとね、プレゼントしたのを付けてきてくれて」
「うんっ」
 空ちゃんに手を引かれ、学校へ歩き出した。昨日はすぐ横に並んでいた二人の足。今日はほんの少し、わたしが遅れていた。