Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 (舞台に明かりが戻り、事件現場にダイスケが立っている。いらついた態度で手錠を掛けた月子をつれて女警部とその使い走りの警部補が部屋に入ってくる)

「なんだダイスケ、わざわざ現場に呼び出したりなんかして。もうこの女が犯人だって事でケリがついただろう」

「違うわ!私はこいつを殺してなんかいない!」

「はいはーい、静粛にー。尺の都合から単刀直入に言うよー。月子さんは犯人じゃない」

「な、何をいう!…月子にはスメラギを殺す動機があった。それに事件現場は密室。被害者であるスメラギから招かれない限り、この部屋で殺人を犯すなんて不可能だ!」

「だからさ、月子さんはどうやってスメラギを殺したのよ?」

「!?」

「IQ低めの読者の皆さんにも聞くよ?俺はこの現場に来てから一貫して凶器の話をしていた。それなのにあんたはずっと感情論でずっと月子を犯人にすることばかり考えていた。
これだからまーんの者はクソなんだよね。バラエティに教育に政治や芸術。名前が残るような実績を残してる女が居んの?女が出しゃばると折角盛り上がったコンテンツが死ぬ。日本という国を駄目にしている象徴だよ」

「じょ、女性叩きも大概にしろ!この部屋を隅々まで探せば、初撃を与えた凶器が見つかるはずだ。そういえば使走警部、月子の部屋はどうだった?」

「はい。生活が荒れているのか、とても散らかっていましたが凶器になるような鈍器はみつかりませんでした。しいて言えば、こいつでしょうか」

「キャー!何人の所有物を勝手に晒してんのよ!」

「こ、これはBLアニメモノの抱きマクラじゃないか」

「はい、恋人がいない暦イコール、年齢の月子容疑者は毎晩これを抱いてお股を濡らしていたと考えられます。ちょ、痛っ、やめろ!」

「ハハッ、いい趣味してるけど、流石にこれは凶器にはならないよ。凶器を隠すために中を開いた跡もない。凶器がこれだって特定できるモノが出てこない限り、月子さんは犯人じゃない」

「そ、それじゃ月子以外にスメラギを殺す事の出来た人物が居たってことか。被害者に背後からくわえられた二撃。そして消えた凶器…これじゃ事件は迷宮入りじゃないか」


「あ、あの~また何か御用でしょうか~」

「ああ、待ってたよ。四足さん。事件当時あなたはここから徒歩5分のコンビ二でバイトをしていた。それはあなたの同僚からも聞いて証言をとってある」

「はあ…」

「事件が起こった日のあなたのバイトのシフトは5時間勤務。労働基準法でどこかで休憩を取らなければならない。休憩時間、あなたはどこにいましたか?」

「は、はい!休憩時間ですか…?ボクはあの日、自分の部屋に戻ってました」

「な、なんだと!それは初耳だ!」

「ちょっと、オバハン黙ってて」

「黙っていられるか!…その時隣の部屋はどうだった?部屋の壁は?自分の部屋に穴が開いていたり散らかっていたらすぐに気付くはずだろう?」

「そ、それは…玄関に置き忘れた傘を取りに戻っただけですから。ほら、当日は夜から雨だったでしょう?」

「ほほう…」

「ちょっと、アナタ!何が可笑しいんですか!?」

「ハハッ、いやーおかしいね。15分の休憩時間で往復10分掛けて自分の部屋に戻って傘を取りにいく?確かに玄関と居間とでドアで区切られたこの部屋の構造だったら壁の穴に気付かなかった言い訳は成立する。
確かにあの日は雨だったけど、髪が少し濡れる程度の小雨だった。雨が降るというニュースを見ていれば分かってたと思うけど?」

「さ、最近肌荒れが酷くて、それにほら、雨で髪が崩れちゃうと格好悪いでしょう!?」

「言い訳が苦しくなってきたな…ひょっとして犯人は」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!女警部さん!凶器がまだ見つかってないって話だそうじゃないですか!確かに事件当日にボクは自分の部屋に居た!
でも15分のわずかな休憩時間で部屋に戻って隣人を殺す事なんて出来ない!往復10分の道のりをどうやって…」

「いや、凶器はこの部屋にある」

「「 なんだって!? 」」

「それは、これだ! ギュウウウウ」

「あいててて!感じてまう!あひー、誰か助けてやー」

「何!?あのふざけた観葉植物が凶器だというのか!?」

「ちょっと、下のほう調べてみて、使い走り警部補。人間で言う足裏の部分」

「ひひー、やめろや!くすぐったいわ!」

「これは、白い石膏のような物質が付着していますね。よく見りゃ体にも粉状に降りかかってる」

「この部屋を見たときに変だと思ったんだよ。なんでこんなナンセンスなオブジェがこの部屋にあるのか。四足さん、こいつにはよーく見覚えがあるよね」

「うっ」

「シラを切っても詳しく鑑識をかければ解かるはずだ。これは元々あなたの部屋にあったものでしょ?あなたはこれを自分の部屋からタオパイパイのようにスメラギの部屋に投げつけ、
壁を突き破って被害者の頭に当て、その穴から体をねじこんでこの部屋に出て、起き上がったスメラギの首の後ろに一発手とうを振り下ろした。それがこの密室殺人事件の真相だ」

「そ、そんなバカな!ファンタジーでもフィクションでもそんな事が出来てたまるか!ふざけるなよ!なにがIQ999探偵だ!付き合ってられるか!月子を連れて行け!」

「待てよ!低知能指数者!四足さんは中国拳法習得者だ!さっき肌荒れを見せようとして捲り上げた左腕のタトゥーがその証拠だ!」

「なんだって?」

「…確かにムカデのタトゥーが見つかりました!」

「四足さんが習得した拳法には体の関節を外して狭い隙間に入り込む技術もあったはず。それを駆使すればこれくらいの大きさの壁の穴から相手の部屋に潜り込むには不可能じゃない!
壁越しに鈍器をスメラギにぶつけ、開けた壁から隣の1302号室に侵入し、素手喧嘩で相手の息の根を止めた。そして捜査の裏をかく為に瓦礫の向きを偽装した…
おそらくこれに時間がかかったんだろう。バイト先の制服の袖にも白い粉状の粉末が付着している」

「た、確かにバイト先の制服に白い粉が!」

「まさか、そんな理不尽な事があってたまるか…」

「ダイスケさん、だっけ?ははっ、全部アナタのいうとおりだ。スメラギを殺したのはボクだ…」

「な、なんだってーー!?」

「だって、だって……毎日バイオリンの音がうるさくてさぁ!建設費ケチりやがって、壁が薄すぎなんだよぉ!せっかく大枚はたいてこの高級マンションに越してきたのに隣に住んでるのは親の金で毎日ヘラヘラ暮らしてる苦労知らずの大馬鹿だ!
毎日時給いくらで働いてるのが馬鹿馬鹿しくなるよ!それに毎日女を無理やり部屋に連れ込もうとしてるしさぁ!俺は悪くねぇ!世の中にはこびる悪に正義の鉄槌を下してやったのさ!」

「正体現したね。機動隊、身柄確保!」

「な、なんだと!いつの間にこれだけの大人数が!」

「く、くそっ!…さすがに麻酔銃はやりすぎだろ」

 四足がその場で倒れこんで、大盾を持った男達が身柄を取り囲み四足の両腕を持ち上げて舞台袖に消える。


「はあ、はあ…本当に四足が犯人だったとは…ダイスケ、おまえの捜査を疑って悪かった。我々一同、深く陳謝する」

「別に良いよ。ファンなんとか警部。あんたの驚き芸も面白かったよ」

「だ、ダイスケさん!」

「ん、月子さんか」

「わ、私が犯人じゃないって助けてくれてありがとう!こ、この恩はどんなに頭を下げても感謝しきれません!も、もしよろしければわ、私の乾ききった処女ま○こにアナタの黒光りした新南部を捻じ込んでその中で発射して…
って乙女になんて台詞言わせるんじゃこのクソ兄ぃ!!」

「のわーー!!」

 妹にケツキックされて客席に飛び込むIQ999探偵。閉演を告げるベルが鳴り響き暗幕が閉じ始め、観客から拍手が鳴り響いた……!


 ~カーテンコール~

 スメラギ「今回、この演劇をやるにあたって会場をおさえたのに、まさか死体役とは。台本を考えたダイスケには強く言っておきます。お付き合い頂きありがとうございました」

 彩子「主人を差し置いて召使いの私がまさかこんな大きな役を貰えるとは…いまでも信じられません。
高知能指数設定の主人公と比較してちょっと頭の悪い発言が多かったですけど、これが普段の私ではございませんので。誤認識なされぬようよろしくお願いいたします」

 名古屋「いやー、観葉植物役、ということでオイシイかなーなんて思ってたんですけど、乳首を弄られるだけとは思いませんでした。最初から最後までずっと出演してるんで笑い堪えるの大変でしたよー。
もちろん、せせら笑いですけどねー」

 後藤「はじめまして。私普段はスメラギ坊ちゃまの屋敷で働く後藤という者です。今回、使走警部補という重要な役割を与えられてプレッシャーで前日眠れなくて…子供の劇で緊張し過ぎですか。そうですか…」

 四足「どうも、犯人役の四足歩です!さすがにステゴロで人を殺せる自信はありませんが、家が中国拳法をやっているのは本当です!学校でも空手部に所属しています。体験入部希望者、募集中です!」

 月子「今回私の馬鹿な兄が脚本を書いたクソみたいな演劇にお付き合い頂き本当にありがとうございます。特に思い入れとかないんで、最後の人、どうぞ」

 ダイスケ「えー、今回ゴトケン先生がソルト先生に謝る機会を作って頂いて…へっ?名古屋オフ回の話じゃない…?いや別にスベってねぇし。他作家の名前出すな?はいはい、どんべえどんべえ。
てなことで、今回セリフだらけの演劇を企画して実行してみた訳ですが、皆さんどうだったでしょうか?まぁぶっちゃけあのトリックを思いついたからやってみたかっただけです。こんな行き当たりばったりな作品でしたがお気に召せれれば幸いです。お付き合いアリガトウ御座いました」

 一同退席する。調子はずれの拍手と生暖かい歓声が演者を包み込み再び暗幕が引かれてこのお話はおしまい。


 IQ999探偵 ~お前、ネットで俺の事バカにしてたよな?

~完~


       

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